日産の高級ミニバンとして、ファミリー層を中心に高い人気を誇るエルグランド。広々とした室内空間と快適な乗り心地で、多くのドライバーに愛されています。しかし、長く乗り続ける中では、予期せぬ故障に見舞われることも少なくありません。
「最近、車の調子が悪いかも…」「エルグランドってどんな故障が多いの?」と不安に感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、エルグランドでよく報告される故障の症状や、その原因、そして気になる修理費用の目安について、世代ごとの特徴も交えながら、わかりやすく解説していきます。愛車と長く付き合っていくためのメンテナンスのヒントもご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
エルグランドの故障でよくある症状とは?

エルグランドは快適で頼りになるミニバンですが、長く乗っているとどうしても様々な箇所に不具合が出てくることがあります。ここでは、オーナーからよく報告される代表的な故障の症状について見ていきましょう。愛車のちょっとした変化に早めに気づくことが、大きなトラブルを防ぐ第一歩です。
エンジンやトランスミッション(CVT)の不具合
エルグランドの心臓部であるエンジンや、動力をタイヤに伝えるトランスミッションに不具合が出ると、走行に直接影響するため特に注意が必要です。
また、特に3代目(E52型)のエルグランドでは、CVT(無段変速機)の不具合がよく知られています。 具体的な症状としては、「発進時にもたつく」「変速時にガクッとショックがある」「『ゴー』『キュー』といった異音がする」などがあります。 これらの症状は、CVT内部の部品の摩耗や、CVTを制御するコンピュータの問題が原因で発生することがあります。
パワースライドドアのトラブル
ミニバンの便利な機能であるパワースライドドアですが、エルグランドではこの部分の故障も少なくありません。 「ドアノブを引いても開かない」「途中で止まってしまう」「開閉時に異音がする」といった症状が代表的です。
原因として多いのは、ドアを動かすモーターやワイヤーの経年劣化、ドアの開閉を検知するセンサーの不具合などです。 特にE52型では、ドア周りのゴム部品(ドアモール)が劣化して潰れることで、ドアノブを引いた際の初動を機械がうまく感知できず、開かないというケースも報告されています。 この場合は、部品交換ではなくドアの建て付け調整で改善することもあります。
エアコン・電装系の故障
快適なドライブに欠かせないエアコンにも、トラブルが発生することがあります。「エアコンの風が冷えない、または暖まらない」「風量が弱い」「異音がする」といった症状が挙げられます。 原因は、エアコンガスが漏れている、冷媒を圧縮するコンプレッサーが故障している、送風するファンモーターが不具合を起こしているなど様々です。 E52型では、コンプレッサーの電磁クラッチが故障し、コンプレッサー自体が作動しなくなるケースも報告されています。
その他、電装系のトラブルとしては、純正ナビゲーションの不具合も挙げられます。 CDやDVDディスクが出てこなくなるイジェクト不良や、後部座席用のリアエンターテイメントシステムの故障なども報告されています。
足回りからの異音やブレーキの不具合
走行中に「ゴーー」「カタカタ」といった異音がする場合、足回りに問題がある可能性があります。特にE51型では、ハブベアリングの劣化による異音が弱点として知られています。 ハブベアリングはタイヤの回転を滑らかにするための重要な部品で、劣化すると走行中にうなるような音が発生します。
また、ブレーキ関連の不具合も安全に関わる重要な問題です。E52型では、ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)の不具合でブレーキの効きが悪くなり、制動距離が長くなる恐れがあるとしてリコールが出されたことがあります。 ブレーキを踏んだ時に違和感があったり、警告灯が点灯したりした場合は、速やかに点検が必要です。
【モデル別】エルグランドの世代ごとの故障傾向

エルグランドは、初代(E50)、2代目(E51)、3代目(E52)とモデルチェンジを重ねてきました。それぞれのモデルで設計や搭載されている部品が異なるため、故障しやすい箇所にも違いがあります。ここでは、世代ごとの特徴的な故障傾向を見ていきましょう。
初代(E50)で注意したい故障ポイント
初代E50型は登場から年数が経過しているため、経年劣化によるトラブルが多く見られます。特にエンジン関連では、オイル漏れや冷却水漏れに注意が必要です。ラジエーターやホース類といったゴム部品の劣化が進んでいる可能性が高いため、定期的な点検が欠かせません。
また、電装系のトラブルも発生しやすくなっています。パワーウィンドウが動かなくなる、エアコンの効きが悪くなるといった症状は、モーターやコンプレッサー自体の寿命が原因であることも考えられます。古いモデルであるため、修理部品の入手が難しくなってきている点も考慮しておく必要があります。
2代目(E51)に多い故障と特徴
2代目E51型は、今なお中古車市場で人気の高いモデルですが、特有の弱点もいくつか報告されています。
電装系では、パワースライドドアの故障がE51型でも多く報告されています。 ワイヤーが切れてしまったり、モーターが作動しなくなったりするケースが見られます。 さらに、燃料計の不具合で正しい残量が表示されず、最悪の場合エンストに至るおそれがあるとしてリコールが出されたこともありました。
3代目(E52)特有の故障事例
現行モデルでもある3代目E52型は、それまでのFR(後輪駆動)からFF(前輪駆動)へと大きく変更され、トランスミッションもATからCVTに変わりました。 このCVTに関連する不具合が、E52型の代表的なトラブルとして挙げられます。 加速が鈍くなったり、変速ショックが大きくなったりといった症状が出ることがあり、特に2010年~2014年式の初期モデルで報告が多い傾向にあります。
また、発電機であるオルタネーターから「コロコロ」という異音が発生する事例も報告されています。 これはエンジンに負荷がかかった時(DレンジやRレンジに入れた時など)に鳴りやすい特徴があります。 その他、パワーステアリングのオイル漏れや、ダッシュボードのひび割れといったE52型特有の弱点も指摘されています。
気になるエルグランドの故障修理費用相場
愛車に不具合が見つかった時、最も気になるのが修理にどれくらいの費用がかかるかという点ではないでしょうか。ここでは、故障箇所ごとに修理費用の目安をまとめました。ただし、実際の費用は車両の状態や依頼する工場によって変動するため、あくまで参考としてご覧ください。
エンジン・CVT関連の高額修理
車の心臓部であるエンジンやCVTの修理は、高額になりやすい傾向があります。
| 修理箇所 | 症状 | 費用の目安 |
|---|---|---|
| オルタネーター交換 | コロコロという異音、バッテリー警告灯の点灯 | 5万円 ~ 10万円程度 |
| イグニッションコイル交換 | アイドリング不調、エンジンの振動 | 1本あたり1.5万円~(工賃込) ※エルグランドは複数本使用 |
| CVT(トランスミッション)交換 | 変速ショック、加速不良、異音 | 50万円 ~ 70万円程度(新品) |
| CVT(リビルト品・中古品)交換 | 同上 | 15万円 ~ 40万円程度 |
CVTの交換は特に高額で、新品に交換すると50万円以上かかることもあります。 費用を抑える方法として、リビルト品(再生部品)や中古部品を活用する選択肢もありますが、品質や保証内容をよく確認することが重要です。
エアコン・電装系の修理費用
快適装備であるエアコンや電装系の修理費用も、故障箇所によってはまとまった出費となります。
| 修理箇所 | 症状 | 費用の目安 |
|---|---|---|
| エアコンコンプレッサー交換 | エアコンが冷えない、異音 | 8万円 ~ 15万円程度 |
| パワースライドドアモーター/ワイヤー交換 | ドアが開かない、途中で止まる | 5万円 ~ 15万円程度 |
| 純正ナビ(イジェクト不良など)修理 | CD/DVDの出し入れができない | 9万円前後 |
| ハンドルロックアクチュエータ交換 | エンジンがかからない | 5万円 ~ 7万円程度 |
パワースライドドアの修理は、モーター自体の交換になると10万円を超えるケースもあります。 また、E52型で報告のあるエンジンがかからなくなるトラブルは、ハンドルロックの部品(アクチュエータ)が原因の場合があり、これも数万円の修理費がかかります。
足回り・消耗品の交換費用
走行性能や安全性に直結する足回りや、定期的な交換が必要な消耗品についても費用を把握しておきましょう。
| 修理・交換箇所 | 症状・交換目安 | 費用の目安 |
|---|---|---|
| ハブベアリング交換 | 走行中の「ゴー」という異音 | 1箇所あたり 3万円 ~ 5万円程度 |
| ラジエーター交換 | 水温計の上昇、冷却水漏れ | 5万円 ~ 10万円程度 |
| ブレーキパッド/ローター交換 | ブレーキ時の異音、ブレーキの効きの悪化 | パッド:1.5万円~、ローター:3万円~ |
| パワステオイル漏れ修理 | ハンドルが重くなる、オイル漏れ | 3,500円~10万円程度 |
パワーステアリングのオイル漏れは、ホースの交換など軽微な修理で済めば数千円程度ですが、ギアボックス本体の故障となると10万円近くかかることもあります。
エルグランドの故障を防ぐ!日常的なメンテナンス

高額な修理費用を避けるためには、日頃からのメンテナンスが非常に重要です。大きな故障に繋がる前に、定期的な点検と消耗品の交換を心がけましょう。ここでは、エルグランドのコンディションを良好に保つためのメンテナンスポイントをご紹介します。
定期的なオイル交換の重要性
エンジンオイルは、エンジン内部の潤滑や冷却、洗浄など多くの役割を担っています。オイル交換を怠ると、エンジンの性能低下や燃費の悪化を招くだけでなく、最悪の場合はエンジンが故障してしまう可能性もあります。
日産のメンテナンスノートでは、標準的な使用状況で「15,000kmまたは1年」ごとの交換が推奨されていますが、市街地走行が多い、短い距離の運転を繰り返すといった「シビアコンディション」に該当する場合は、その半分の「7,500kmまたは6ヶ月」が交換目安となります。 愛車の使用状況に合わせて、早めのオイル交換を心がけることがエンジンを長持ちさせる秘訣です。
CVTフルードの交換は必要か?
E52型エルグランドのオーナーにとって気になるのが、CVTフルード(CVT内部のオイル)の交換ではないでしょうか。CVTフルードもエンジンオイルと同様に、走行距離が増えるにつれて劣化していきます。劣化が進むと、変速ショックやジャダー(発進時の振動)、燃費の悪化といった不具合の原因となることがあります。
メーカーは「無交換」としている場合もありますが、車のコンディションを長く保つためには、40,000km~60,000km程度での交換を検討するのがおすすめです。ただし、CVTフルードの交換は専門的な知識と設備が必要なため、必ずディーラーや信頼できる整備工場に相談しましょう。過走行車のフルード交換は、かえって不具合を誘発するリスクもあるため、専門家の判断を仰ぐことが重要です。
タイヤやブレーキパッドの点検
タイヤやブレーキは、車の安全性に直結する非常に重要なパーツです。タイヤは空気圧が適正でないと、燃費の悪化や偏摩耗、最悪の場合はバースト(破裂)につながる危険性があります。月に一度はガソリンスタンドなどで空気圧をチェックする習慣をつけましょう。また、タイヤの溝が減ってきたらスリップサインが出る前に交換が必要です。
ブレーキパッドも走行距離とともに摩耗していく消耗品です。ブレーキを踏んだ時に「キーキー」という異音がし始めたら、交換時期のサインです。残量が少なくなるまで使用し続けると、ブレーキローターまで傷つけてしまい、余計な修理費用がかかることになります。車検や定期点検の際に、必ず残量をチェックしてもらいましょう。
エルグランドの故障と上手に付き合うためのまとめ

この記事では、日産エルグランドでよくある故障の症状、世代ごとの特徴、修理費用の目安、そして故障を防ぐためのメンテナンスについて解説してきました。
エルグランドは世代によって特有の弱点があり、E51型ではハブベアリングやラジエーター、E52型ではCVTやオルタネーターなどが注意すべきポイントとして挙げられます。 また、パワースライドドアやエアコンといった快適装備のトラブルも、年式を問わず発生する可能性があります。
予期せぬ故障は不安なものですが、日頃から定期的なメンテナンスを行い、愛車の小さな変化に気を配ることで、大きなトラブルを未然に防ぐことができます。 特にエンジンオイルやCVTフルードといった油脂類の管理は、車の寿命に大きく影響します。もし異音や警告灯の点灯など、異常を感じた場合は、速やかにディーラーや専門の整備工場に相談することが大切です。
この記事で得た知識をもとに、愛車の状態を正しく把握し、適切なメンテナンスを行うことで、これからも快適なエルグランドとのカーライフを楽しんでください。



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