ワゴンRを自分だけの個性的な一台に仕上げたい、そんな思いを持つ方々から根強い人気を誇るのが「ヤンキー仕様」のカスタムです。ヤンキー仕様と聞くと、少し威圧的なイメージを抱くかもしれませんが、その本質は「目立つこと」「個性を出すこと」を重視した自己表現のスタイルです。
エアロパーツで見た目の印象をガラリと変え、車高を下げて迫力を出し、内装にもこだわって自分だけの空間を演出する。この記事では、そんなワゴンRのヤンキー仕様カスタムに興味がある方に向けて、定番のカスタム内容から、気になる費用、そして避けては通れない車検の注意点まで、わかりやすく解説していきます。これからカスタムを始めたい方も、さらにこだわりの一台を目指す方も、ぜひ参考にしてみてください。
ワゴンRをヤンキー仕様にする定番カスタム
ワゴンRをヤンキー仕様にするカスタムは、外装(エクステリア)から始めるのが王道です。車の第一印象を決定づける外装カスタムには、いくつかの定番メニューがあります。これらを組み合わせることで、ノーマルとは全く違う、存在感あふれる一台に仕上げることができます。ここでは、特に人気の高い代表的なカスタムを紹介します。
存在感を放つエアロパーツ
フロントバンパー、サイドステップ、リアバンパー(またはリアアンダースポイラー)の3点セットが基本で、これらを装着するだけで車全体のボリュームが増し、低く構えたような迫力あるスタイリングが生まれます。
特にフロントバンパーは「車の顔」とも言える部分で、デザインによって大きく印象が変わります。 開口部が大きく、攻撃的なデザインのものや、メッキパーツを多用して高級感を演出するものなど、様々なメーカーから販売されています。 リアウィング(リアスポイラー)を追加すれば、スポーティーな雰囲気を加えることも可能です。これらのパーツはFRP(繊維強化プラスチック)製のものが多く、塗装が必要な場合がほとんどです。自分の好きな色に塗装することで、さらに個性を際立たせることができるでしょう。
低さが命!シャコタン(車高短)のやり方
ヤンキー仕様のもう一つの大きな特徴が、極端に低い車高、通称「シャコタン(車高短)」です。 地を這うような低いスタイルは、威圧感と独特のカッコよさを生み出します。車高を下げる主な方法は、「ダウンサス」と「車高調」の2種類があります。
- ダウンサス(ローダウンスプリング)
純正のスプリングと交換するだけで手軽に車高を下げられるパーツです。比較的安価で、3cm〜4cm程度のローダウンが一般的です。 しかし、下げ幅が固定されているため、後から高さの調整はできません。 - 車高調(車高調整式サスペンションキット)
スプリングとショックアブソーバーが一体化したパーツで、ネジ式や全長調整式などのタイプがあります。 ダウンサスよりも高価ですが、ミリ単位で車高を自由に調整できるのが最大のメリットです。がっつり車高を下げたい場合や、ホイールとのバランスを細かく調整したい場合には必須のアイテムと言えるでしょう。
ただし、過度なローダウンは乗り心地の悪化や、段差などで車体の下部を擦るリスクが伴うため注意が必要です。
足元を飾るホイール&タイヤ選び
車高を下げたら、次にこだわりたいのがホイールとタイヤです。ヤンキー仕様では、ギラギラとしたメッキやポリッシュ(鏡面仕上げ)の大径ホイールが人気です。インチアップ(タイヤの外径を変えずにホイールの直径を大きくすること)をして、タイヤの側面(サイドウォール)が薄い「低扁平タイヤ」を組み合わせるのが定番スタイル。
さらに、ホイールを車体のフェンダーぎりぎりまで外側に出す「ツライチ」セッティングも重要なポイントです。これにより、車全体に一体感とワイド感が生まれます。ただし、フェンダーからタイヤやホイールがはみ出すと整備不良となり、車検に通らなくなるため注意が必要です。 デザインも、スポークタイプやディッシュタイプ、メッシュタイプなど様々なので、エアロパーツのデザインと合わせて、トータルコーディネートを楽しみましょう。
視線を集めるヘッドライト・テールランプの加工
灯火類のカスタムも、ヤンキー仕様の個性を引き立てる重要な要素です。
- ヘッドライト
社外品のヘッドライトユニットに交換するのが手軽な方法です。プロジェクターランプやLEDリング(イカリング)が内蔵されたデザインは、顔つきを精悍な印象に変えてくれます。 また、ヘッドライトの内部を塗装する「インナーブラックアウト」や、LEDを追加して光らせる加工も人気です。 - テールランプ
LEDが多用された社外品のテールランプに交換するのが主流です。流れるように光るシーケンシャルウィンカー機能を備えたものも増えており、後続車へのアピール度は抜群です。スモークタイプのレンズを選べば、リアビューが引き締まり、よりクールな印象になります。
これらの灯火類は、色や明るさが保安基準で定められています。基準を満たさないと車検に通らないだけでなく、整備不良で取り締まりの対象になる可能性もあるため、適合品を選ぶようにしましょう。
こだわりたい内装のヤンキー仕様カスタム

外装で周囲の注目を集めたら、次は運転席に乗り込んだときに満足感に浸れる内装(インテリア)のカスタムです。ヤンキー仕様の内装は、外装と同様に派手さと高級感を重視する傾向があります。自分だけの空間を作り上げる、代表的な内装カスタムを紹介します。
派手さが魅力のシートカバーと内張り
内装の面積の大部分を占めるシートとドアの内張りを変えることで、車内の雰囲気は一変します。
- シートカバー
純正シートの上から被せるだけで、手軽にイメージチェンジが可能です。ヤンキー仕様では、光沢のあるエナメル素材や、高級感を演出するレザー調(PVCレザー)のものが人気です。色は定番のブラックやホワイトのほか、レッドやパープルといった派手な色も選ばれます。 ダイヤキルトやギャザーなどのデザインが施されたものを選ぶと、よりゴージャスな雰囲気を演出できます。 - 内張り(ドアトリム)の張り替え
シートカバーの色や素材に合わせて、ドアの内張りも同じ生地で張り替えると、内装全体に統一感が生まれます。 これはDIYで行うには少し難易度が高いですが、完成したときの満足感は格別です。チンチラや金華山といった、トラックの内装で使われるような豪華な生地を張るのも、ヤンキー仕様ならではのカスタムです。
ムード満点のLEDイルミネーション
夜のドライブを盛り上げるのが、LEDを使ったイルミネーションです。足元やダッシュボード周り、天井などにLEDテープやスポットライトを仕込むことで、ムーディーな空間を演出します。
色はブルーやパープル、ピンクなどが人気で、リモコンで色を変えられたり、音に合わせて点滅させたりできる製品もあります。取り付けも比較的簡単で、シガーソケットやヒューズボックスから電源を取るタイプが主流です。しかし、運転の妨げになるような過度な光量や、前方から赤色が見えるような設置は保安基準に抵触する可能性があるため、注意して楽しみましょう。
大音量で楽しむオーディオカスタム
ヤンキー仕様の車といえば、大音量で音楽を鳴らすイメージを持つ方も多いでしょう。 そのためにはオーディオシステムの強化が欠かせません。
- スピーカーの交換
純正スピーカーから、より高音質でパワーのある社外スピーカーに交換するのが第一歩です。ドアのデッドニング(制振・吸音処理)を同時に行うと、音質が格段に向上します。 - サブウーファーの追加
「ドンドン」という重低音を響かせるためには、サブウーファーの設置が必須です。シート下やラゲッジスペースに設置するボックスタイプが一般的です。 - 外部アンプの導入
よりパワフルでクリアなサウンドを求めるなら、スピーカーを駆動させるための外部アンプを追加します。
ラゲッジスペースにアンプやサブウーファーをインストールし、LEDでライトアップする「オーディオインストール」は、見た目のインパクトも絶大で、イベントなどでも注目を集めるカスタムです。
ふわふわが定番?ダッシュボードマットとデコレーション
細部のデコレーションも、ヤンキー仕様らしさを演出する上で重要です。
- ダッシュボードマット
ダッシュボードの上に敷くマットは、定番アイテムの一つです。フワフワとした手触りのファー素材(通称:シャギーマット)や、レザー調のマットにキルティング加工が施されたものが人気です。 - ルームミラーの飾り
大きなふさ(ジャンクションプロデュースの「ふさ」が有名)や、キラキラしたアクセサリーをルームミラーからぶら下げるのも定番のスタイルです。 - シフトノブの交換
クリスタルタイプの長いシフトノブや、水中花デザインなど、個性的なシフトノブに交換するのも手軽なカスタムです。
これらの小物を統一感のあるデザインや色で揃えることで、より完成度の高い内装に仕上げることができます。
ヤンキー仕様カスタムにかかる費用の目安
ワゴンRをヤンキー仕様にカスタムするには、どれくらいの費用がかかるのでしょうか。ここでは、代表的なカスタムパーツの費用相場を、外装と内装に分けて紹介します。DIYで行うか、専門ショップに依頼するかによっても総額は大きく変わってきます。
外装カスタム(エアロ・車高調・ホイール)の費用相場
外装カスタムは高額になりやすいですが、車の印象を最も大きく変える部分です。
| カスタム内容 | パーツ代の目安 | 取り付け工賃の目安 | 備考 |
|---|---|---|---|
| エアロパーツ(3点セット) | 5万円 ~ 20万円 | 塗装・取り付けで 8万円 ~ 15万円 | 未塗装品が多いため、塗装費用が別途かかります。 |
| 車高調 | 5万円 ~ 15万円 | 2万円 ~ 4万円 | アライメント調整費用が別途必要になる場合があります。 |
| ダウンサス | 1.5万円 ~ 3万円 | 1.5万円 ~ 3万円 | 車高調よりパーツ代・工賃ともに安価です。 |
| ホイール&タイヤ(4本セット) | 5万円 ~ 20万円(15~16インチ) | 5千円 ~ 1万円 | インチやデザイン、タイヤの銘柄によって価格は大きく変動します。 |
内装カスタム(シートカバー・オーディオ等)の費用相場
内装カスタムは、比較的DIYで挑戦しやすいパーツも多く、費用を抑えることも可能です。
| カスタム内容 | パーツ代の目安 | 取り付け工賃の目安 | 備考 |
|---|---|---|---|
| シートカバー | 1万円 ~ 3万円 | 1万円 ~ 2万円 | DIYでの取り付けも可能ですが、綺麗に装着するにはコツが必要です。 |
| LEDイルミネーション | 3千円 ~ 1万円 | 5千円 ~ 2万円 | 電源の取り方や配線の隠し方によって工賃が変わります。 |
| スピーカー | 1万円 ~ 5万円(フロント・リア) | 1万円 ~ 3万円 | デッドニングなど、追加作業によって工賃が加算されます。 |
| サブウーファー | 1万円 ~ 5万円 | 1万円 ~ 3万円 | 電源ケーブルの引き回しなどが必要になります。 |
DIYとショップ依頼のメリット・デメリットと比較
カスタム費用を大きく左右するのが、DIY(自分で作業する)かショップに依頼するかです。
- DIYのメリット・デメリット
- メリット:工賃がかからないため、費用を大幅に抑えられる。自分の手で作り上げる満足感が得られる。
- デメリット:専門的な知識や工具が必要。失敗するリスクがあり、時間と手間がかかる。
- ショップ依頼のメリット・デメリット
- メリット:プロによる確実で綺麗な仕上がりが期待できる。複雑な作業も安心して任せられる。
- デメリット:工賃がかかるため、総額が高くなる。
ヤンキー仕様で気になる車検の注意点
こだわってカスタムしたワゴンRですが、公道を走るためには2年に1度の車検に合格しなければなりません。 ヤンキー仕様のカスタムは、保安基準に抵触しやすいものが多く、知らずにいると車検に通らない可能性があります。ここでは、特に注意が必要なポイントを解説します。
車高の最低地上高ルール
シャコタンにする際に最も気を付けなければならないのが「最低地上高」の規定です。道路運送車両の保安基準では、車体の最も低い部分(マフラーやサスペンションの一部を除く)が地面から9cm以上離れていなければならないと定められています。
車高調で車高を下げすぎていると、この基準をクリアできずに不合格となります。車検前には、車高を9cm以上に調整しておく必要があります。また、エアロパーツを装着している場合、それが最も低い部分になることも多いので、エアロパーツを含めた高さで確認することが重要です。
タイヤ・ホイールのはみ出し(フェンダー)の基準
ツライチを目指す上で注意したいのが、タイヤとホイールのはみ出しです。保安基準では、タイヤが車体(フェンダー)から10mm以上はみ出してはならないと定められています。ホイールについては、少しでもはみ出していると不合格となります。
ワイトレ(ワイドトレッドスペーサー)の装着や、インセット(オフセット)の値が小さいホイールを選ぶ際には、はみ出さないように細心の注意が必要です。また、タイヤに極端な角度をつける「鬼キャン」も、タイヤの異常な摩耗やはみ出しの原因となり、車検に通らない可能性が高くなります。
ライト類の色や明るさの規定
ヘッドライトやテールランプ、ウィンカーなどの灯火類は、色や明るさ、点滅方法などが細かく定められています。
- ヘッドライト:色は白色と定められています。青みがかったHIDやLEDバルブは、ケルビン数が高すぎると車検に通らないことがあります。 光軸(照らす方向)や光量も検査されるため、バルブ交換やヘッドライト加工後は調整が必要です。
- ポジションランプ(車幅灯):白色、淡黄色、または橙色。
- ウィンカー(方向指示器):色は橙色で、毎分60回以上120回以下の一定周期で点滅する必要があります。
- テールランプ:色は赤色。
- ブレーキランプ:色は赤色で、テールランプの5倍以上の明るさが必要です。
マフラーの音量と排ガス規制
迫力あるサウンドを求めてマフラーを交換する場合、音量の規制に注意が必要です。普通乗用車の場合、近接排気騒音(エンジン回転を上げて測定する音量)が96dB(デシベル)以下(平成22年4月1日以降に生産された車両)であることが基準となっています。
社外マフラーには、保安基準適合を証明する「JASMA認定プレート」などが付いているものを選ぶと安心です。 また、触媒(排気ガスを浄化する装置)を取り外す「触媒ストレート」などの加工は、排ガス規制をクリアできないだけでなく、音量も大きくなるため車検には通りません。
ヤンキー仕様のベースに人気のワゴンRの型式
ワゴンRは長い歴史を持つ人気車種であり、どの型式でもカスタムを楽しむことができますが、特にヤンキー仕様のベースとして人気が高いモデルが存在します。その理由は、中古車価格の手頃さや、カスタムパーツの豊富さなどが挙げられます。
カスタムパーツが豊富!3代目 MH21S/MH22S
ヤンキー仕様のベースとして最も人気が高いと言っても過言ではないのが、2003年から2008年にかけて販売された3代目のMH21S/MH22S型です。
人気の理由は、角張ったボクシーなスタイルがカスタム映えすること、そして何より社外パーツが非常に豊富な点です。 エアロパーツやヘッドライト、テールランプなど、様々なメーカーから多種多様なデザインのパーツがリリースされており、自分好みのパーツを見つけやすいのが最大の魅力です。 中古車市場での流通量も多く、車両本体価格が手頃なため、カスタムに予算を回しやすいというメリットもあります。今でも多くのカスタムカーイベントで、個性的に仕上げられたMH21S/MH22Sを見ることができます。
スタイリッシュさが人気!4代目 MH23S
2008年から2012年にかけて販売された4代目のMH23S型も、カスタムベースとして人気の高いモデルです。
先代のMH21S/MH22Sに比べて丸みを帯びた、よりスタイリッシュなデザインが特徴です。 このモデルもカスタムパーツが豊富に揃っており、特にスティングレーはシャープなヘッドライトデザインで人気があります。 内装もインパネシフトが採用されるなど、現代的なデザインになっています。 中古車価格もこなれてきており、比較的新しい年式でスタイリッシュなヤンキー仕様を目指したい方におすすめのモデルです。
比較的新しくて狙い目?5代目 MH34S/MH44S
2012年から2017年にかけて販売された5代目のMH34S/MH44S型は、燃費性能を大幅に向上させた「スズキグリーンテクノロジー」が採用されたモデルです。
比較的新しいモデルのため、中古車価格は前の世代に比べるとやや高めですが、その分、車両の状態が良いものが多いというメリットがあります。この世代になるとカスタムパーツは少しずつ絞られてきますが、主要なメーカーからはエアロパーツや足回りパーツが販売されています。 燃費も良く、快適装備も充実しているため、「快適性も重視しつつ、ヤンキー仕様のカスタムを楽しみたい」という、少し大人なカスタムを目指すユーザーからの支持を集めています。
まとめ:自分だけのワゴンRヤンキー仕様でカーライフを楽しもう

この記事では、ワゴンRをヤンキー仕様にカスタムするための具体的な方法や費用、そして重要な車検の注意点について解説しました。
ヤンキー仕様カスタムは、エアロパーツやシャコタン、派手な内装など、「いかに目立たせるか」「いかに個性を表現するか」という点が醍醐味です。 定番のカスタムを参考にしつつも、自分なりのこだわりを詰め込むことで、世界に一台だけのオリジナルなワゴンRを作り上げることができます。
しかし、カスタムを楽しむ上で忘れてはならないのが、法律(保安基準)を守るということです。車高やタイヤのはみ出し、灯火類の色など、車検で定められたルールをしっかりと理解し、基準の範囲内でカスタムを楽しむことが、長く愛車と付き合っていくための秘訣です。
この記事を参考に、あなただけのカッコいいワゴンRヤンキー仕様を完成させ、充実したカーライフを送ってください。



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