WRX STI(VAB型)は、その卓越した走行性能で多くのドライバーを魅了するスポーツセダンです。しかし、その一方で「この車で車中泊はできるのだろうか?」と疑問に思う方も少なくないでしょう。
結論から言えば、いくつかの工夫を凝らすことで、VABでも十分に車中泊を楽しむことが可能です。もちろん、ミニバンやSUVのような広々とした空間はありませんが、VABならではの機動力を活かし、好きな場所で気軽に一夜を明かすという特別な体験が待っています。
この記事では、VABで快適な車中泊を実現するための具体的なシートアレンジの方法、必須となる便利グッズ、そして安全に楽しむための注意点まで、実践的な情報を詳しく解説していきます。この記事を読めば、あなたもきっと愛車VABとの新しい冒険に出かけたくなるはずです。
VABで車中泊は可能? 気になる基本情報

VAB、つまりスバル WRX STIは、走りを追求したスポーツセダンです。そのため、車中泊を前提とした設計にはなっていません。しかし、工夫次第で一晩を過ごす空間を作り出すことは十分に可能です。ここでは、VABの室内空間で車中泊をする際の基本的な考え方と、そのメリット・デメリットについて見ていきましょう。
VABの室内空間と車中泊の実現性
VABの室内は、運転を楽しむためのタイトなコクピットが特徴です。車中泊で最も重要な寝るスペースを確保するには、後部座席を倒してトランクスルー機能を利用するのが基本となります。後部座席の背もたれを前に倒すことで、トランクから室内にかけてある程度の長さを確保できます。しかし、セダン特有の構造上、完全にフラットな空間にはならず、段差や傾斜が生じます。この段差をいかに解消するかが、VAB車中泊における快適性を左右する最大のポイントと言えるでしょう。身長が高い方にとっては少し窮屈に感じるかもしれませんが、寝る方向を工夫したり、適切なマットを選んだりすることで、一晩を明かすためのスペースは確保できます。
VABで車中泊するメリットとは?
一見、不便そうに思えるVABでの車中泊ですが、実は多くのメリットがあります。最大の魅力は、その圧倒的な機動力です。狭い道や山道でもスムーズに走り抜け、景色の良い場所や穴場スポットへもアクセスしやすいのが強みです。
また、一般的なキャンピングカーやミニバンに比べて燃費が良い傾向にあるため、移動コストを抑えながら長距離の旅行を楽しむことができます。さらに、「車中泊仕様」として大掛かりな改造をする必要がなく、必要なグッズを揃えれば気軽に始められるのも嬉しいポイントです。普段は走りを楽しんでいる愛車で、非日常的な宿泊体験ができることは、VABオーナーにとって特別な思い出となるでしょう。
| VAB車中泊のメリット | 具体的な内容 |
|---|---|
| 高い機動力 | 狭い道や峠道も得意で、アクセスできる場所が広がる |
| 経済性 | 宿泊費の節約はもちろん、比較的良好な燃費で移動コストも抑えられる |
| 手軽さ | 大掛かりな改造は不要。思い立ったらすぐに出発できる |
| 特別な体験 | 愛車との一体感を感じながら、非日常的な時間を過ごせる |
VAB車中泊のデメリットと注意点
もちろん、VABでの車中泊にはデメリットも存在します。最も大きな課題は、やはり室内空間の狭さです。大人2人で寝るのは非常に厳しく、基本的には1人での利用がメインとなります。また、前述の通り、シートを倒しても完全なフラットにはならないため、快適な寝床を作るにはマットやクッションなどで段差を埋める工夫が不可欠です。
天井も低いため、車内での着替えや食事には窮屈さを感じる場面もあるでしょう。さらに、荷物を置くスペースも限られます。寝るスペースを確保すると、大きな荷物は助手席や足元に置くことになり、整理整頓を心がけないと車内が散らかってしまいがちです。これらのデメリットを理解し、対策を講じることが、VABでの車中泊を成功させることにつながります。
快適な寝床を作る!VABのシートアレンジとフルフラット化
VABで快適な車中泊を実現するためには、何よりもまず「寝床」を確保することが重要です。ここでは、基本的なシートアレンジの方法から、最大の課題である段差を解消するための具体的なアイデアまでを詳しく解説します。
基本的なシートの倒し方
VABで寝るスペースを確保するための第一歩は、後部座席を倒すことです。多くのセダンと同様に、VABにもトランクスルー機能が備わっています。
1. トランクを開け、上部にある左右のレバーを引きます。
2. レバーを引くと後部座席の背もたれのロックが解除されるので、室内側から背もたれを前に倒します。
これで、トランクと室内がつながった空間が生まれます。この時、フロントシート(運転席・助手席)を可能な限り前にスライドさせ、背もたれも前に倒しておくと、より広いスペースを確保することができます。ただし、この状態ではまだ快適に寝ることはできません。次に解説する「段差」という大きな壁が立ちはだかるからです。
完全なフルフラットは難しい?段差解消の重要性
後部座席を倒しただけでは、残念ながら快適なベッドにはなりません。VABの場合、主に2つの大きな段差が発生します。
- トランクと倒した座席の間の段差:トランクの床面と、倒した背もたれの間に数センチの段差ができます。
- 倒した座席自体の傾斜と凹凸:座席の背もたれは完全な水平にはならず、傾斜がついています。また、座面との境目にも凹凸が残ります。
これらの段差や傾斜を放置したまま寝ると、体が痛くなったり、寝心地が悪くて熟睡できなかったりする原因となります。VABでの車中泊は、この段差をいかにフラットに近づけるかにかかっていると言っても過言ではありません。快適な睡眠は、翌日のドライブや活動を楽しむためのエネルギー源です。少しの手間を惜しまずに、しっかりと寝床を整えることが大切です。
段差をなくす具体的なアイテムとアイデア
段差解消には、いくつかの方法があります。自分のスタイルや予算に合わせて最適なものを選びましょう。
- 厚手のキャンプ用マットを使う
最も手軽な方法が、厚みのあるインフレーターマットやウレタンマットを敷くことです。厚みが5cm以上あるものであれば、多少の段差は吸収して気にならなくなります。特に、空気を入れて膨らませるインフレーターマットは、使わないときはコンパクトに収納できるため、積載スペースが限られるVABには最適です。購入する際は、車内の寸法を測り、ぴったり収まるサイズのものを選ぶと良いでしょう。 - クッションやタオルケットで埋める
段差が特に気になる部分に、クッションや折りたたんだタオルケット、着替えなどを詰めて物理的に埋めてしまう方法です。これは家にあるものを活用できるため、コストをかけずに試せるのがメリットです。ただし、寝ている間にずれてしまうこともあるため、マットと組み合わせて使うのがおすすめです。 - 自作のベッドキット(板)を用意する
より本格的に、そして完璧なフラット空間を求めるなら、板を使ってベッドキットを自作する方法もあります。通称「すのこ」や「銀マット」を加工して、段差を橋渡しするように設置し、その上にマットを敷くというものです。ホームセンターでコンパネやベニヤ板を購入し、車内の形状に合わせてカットする必要がありますが、一度作ってしまえば設営は非常にスムーズです。DIYが得意な方は、挑戦してみる価値があるでしょう。
VAB車中泊を格段に快適にする必須&便利グッズ

快適な寝床が作れたら、次は車中泊全体の質を向上させるグッズを揃えましょう。ここでは、「快眠」「プライバシー確保」「快適性アップ」の3つの観点から、VAB車中泊であると便利なアイテムをご紹介します。
快眠のためのマストアイテム(マット・寝袋)
快適な睡眠のためには、寝床作りのアイテムに加えて、体に合った寝具が欠かせません。
- 車中泊マット
段差解消の項目でも触れましたが、マットは寝心地を左右する最重要アイテムです。VABの車内に収まるサイズで、十分な厚みがあるものを選びましょう。幅は60cm前後、長さは180cm程度のものが一般的ですが、実際に自分の車内の寸法を測ってから購入するのが確実です。 - 寝袋(シュラフ)
車内は外気の影響を受けやすく、夏以外の季節は想像以上に冷え込みます。特に明け方は気温がぐっと下がるため、季節に対応した寝袋は必須です。寝袋には主に「マミー型」と「封筒型」がありますが、車内では比較的動きやすい封筒型がおすすめです。季節ごとに3シーズン用、冬用など使い分けるのが理想ですが、まずは対応温度が5℃程度の3シーズン用を一つ持っておくと、春から秋まで幅広く対応できます。冬に車中泊をする場合は、氷点下にも対応できる冬用のモデルを必ず用意しましょう。
プライバシーと断熱性を確保するシェード
車内で快適に過ごすためには、外からの視線を遮り、プライバシーを確保することが非常に重要です。また、シェードは車内の温度を快適に保つ役割も果たします。
- サンシェード・目隠しカーテン
フロント、サイド、リアのすべての窓を覆うことができるサンシェードを用意しましょう。車種専用設計のものが最もフィット感が高く、隙間なく光や視線を遮断できるのでおすすめです。吸盤で貼り付けるタイプや、ワイヤーで形を保つタイプなどがあります。特に夏は日差しを遮ることで車内の温度上昇を抑え、冬は冷気を遮断して保温効果を高めるため、一年を通して活躍するアイテムです。専用品がない場合は、銀マットを窓の形にカットして自作することもできます。これがあるだけで、車内がプライベートな空間になり、安心して過ごすことができます。
あると便利な快適グッズ(ランタン、ポータブル電源など)
必須アイテムに加えて、以下のようなグッズがあると、車中泊の快適性がさらに向上します。
- LEDランタン
夜間の車内照明として、火を使わないLEDランタンは安全で便利です。スマートフォンのライトでも代用できますが、ランタンが一つあると車内全体を均一に照らすことができ、読書や荷物の整理がしやすくなります。吊り下げられるタイプや、光の色を調整できるタイプだとさらに使い勝手が良いでしょう。 - ポータブル電源
スマートフォンやカメラの充電、夏場には小型扇風機、冬場には電気毛布など、電化製品を使いたい場合に大活躍するのがポータブル電源です。容量によって価格は様々ですが、スマートフォンを数回充電できる程度の小型のものでも、あると安心感が全く違います。VABはバッテリー上がりのリスクを避けるためにも、エンジンをかけずに電気が使えるポータブル電源の導入は非常におすすめです。 - テーブルやチェア
車内での食事はスペース的に厳しい場合が多いため、天気が良ければ外で食事ができるよう、コンパクトなアウトドア用のテーブルとチェアがあると便利です。車中泊場所のルールを確認した上で、自然の中で食事を楽しむ時間は格別です。
荷物の収納はどうする?積載の工夫
VABはトランク容量も限られているため、荷物の収納には工夫が必要です。寝るスペースを確保した上で、残りの荷物をどこに置くかがポイントになります。
- 助手席と足元を活用する
寝る際は一人であることが前提なので、助手席が最大の荷物置き場になります。クーラーボックスや着替えの入ったバッグなど、大きな荷物は助手席にまとめましょう。運転席や助手席の足元もデッドスペースになりがちなので、靴や小物を置くのに活用できます。 - 収納ボックスを利用する
小物が散乱しないように、蓋付きのコンテナボックスなどを活用して整理整頓を心がけましょう。寝る前に必要なもの(歯ブラシ、タオル、ランタンなど)を一つのポーチにまとめておくと、暗い車内でも探し物をする手間が省けます。 - ルーフキャリアの導入
もし荷物がどうしても収まらない場合や、キャンプ用品などかさばるアイテムを積みたい場合は、ルーフキャリアを取り付けるという選択肢もあります。外観の好みは分かれますが、積載量を飛躍的に増やすことができます。
実践!VABでの車中泊モデルプラン

準備が整ったら、いよいよ実践です。ここでは、車中泊を行う場所の選び方から、当日の過ごし方、そして最も重要な安全に関する注意点までを解説します。
どこで寝る?車中泊スポットの選び方
車中泊はどこでもして良いわけではありません。公共の場所や私有地で無断で車中泊を行うことはマナー違反であり、トラブルの原因となります。必ず許可された場所を選びましょう。
RVパーク:日本RV協会が認定する車中泊施設。有料ですが、電源設備やトイレ、ゴミ処理場などが整備されており、安心して快適に過ごせます。
オートキャンプ場:車を乗り入れてテントの横で寝泊まりできるキャンプ場。車中泊を許可している施設も多いです。焚き火や料理も楽しみたい場合におすすめです。
湯YOUパーク:温泉施設などが駐車場を車中泊用に提供しているサービス。温泉を楽しんだ後、そのまま車内で休むことができます。
道の駅:本来は休憩施設ですが、一部の道の駅では車中泊を容認している場合があります。ただし、あくまで「仮眠」の範囲内とし、長期間の滞在やキャンプ行為(テーブルや椅子を出すなど)は絶対にやめましょう。事前に各施設のルールを確認することが必須です。
車中泊当日の流れと過ごし方
モデルケースとして、1泊2日の車中泊の流れを見てみましょう。
- 目的地へ移動:日中はVABの走りを楽しみながら、目的地周辺の観光やドライブを楽しみます。
- 買い出しと入浴:夕方になったら、スーパーなどで夕食や朝食の買い出しを済ませます。その後、日帰り温泉施設などで入浴を済ませておくと、さっぱりした状態で眠りにつけます。
- 車中泊スポットへ到着:施設のルールに従い、指定された場所に車を停めます。周囲の迷惑にならないよう、アイドリングやドアの開閉は静かに行いましょう。
- 寝床の準備:到着したら、まず寝床のセッティングをします。荷物を助手席に移動させ、段差を解消し、マットと寝袋を広げます。同時に、サンシェードを全ての窓に取り付けてプライベート空間を確保します。
- 夕食・リラックスタイム:車内で簡単な食事をとったり、ランタンの明かりで読書をしたりして過ごします。ポータブル電源があれば、スマートフォンで映画鑑賞なども楽しめます。
- 就寝:歯磨きなどを済ませて就寝します。安全のため、ドアのロックは必ず確認しましょう。
- 起床・朝食:翌朝、鳥のさえずりなどで目覚めたら、簡単な朝食をとります。コーヒーを淹れて飲むだけでも、特別な朝になります。
- 片付け・出発:寝具を片付け、車内を元通りにします。ゴミは必ず持ち帰りましょう。その後、次の目的地へ向けて出発します。
安全に車中泊するための注意点(エンジン、換気など)
車中泊で最も注意すべきは安全管理です。以下の点を必ず守ってください。
- エンジンは必ず停止する
就寝中にエンジンをかけっぱなしにするのは絶対にやめてください。一酸化炭素中毒や車両火災のリスクがあり、非常に危険です。また、騒音や排気ガスは周囲の迷惑になります。夏の暑さや冬の寒さ対策は、エンジンに頼るのではなく、ポータブル扇風機や電気毛布、断熱性の高いシェードや寝袋などで行いましょう。 - 一酸化炭素中毒対策としての換気
エンジンを止めていても、降雪時にマフラーが雪で埋まってしまうと、次にエンジンをかけた際に排気ガスが車内に逆流する危険があります。積雪の可能性がある場合は、マフラー周りの除雪を忘れないようにしてください。また、酸欠防止のため、窓を少しだけ開けておくなどの換気も有効ですが、防犯面とのバランスも考慮が必要です。 - 防犯対策
就寝時は必ず全てのドアをロックしましょう。貴重品は外から見えない場所に保管することが大切です。サンシェードで車内を見えなくすることも、防犯対策として非常に有効です。人里離れた場所や、治安に不安のある場所での車中泊は避けるようにしましょう。
まとめ:工夫次第でVABの車中泊は最高の思い出になる

VAB(WRX STI)での車中泊は、広いとは言えない室内空間や段差など、乗り越えるべき課題がいくつかあります。しかし、適切なグッズを揃え、少しの工夫を凝らすことで、スポーツセダンでの車中泊というユニークで特別な体験が可能になります。
快適な寝床を作るための段差解消、プライバシーと快適性を確保するシェードや寝袋、そして何よりも安全に過ごすためのルールを守ること。これらをしっかりと準備すれば、VABの持つ高い機動力を活かして、これまでとは一味違った自由な旅を楽しむことができるでしょう。
愛車と一体になって過ごす夜は、きっと忘れられない思い出になるはずです。この記事を参考に、あなただけのVAB車中泊スタイルを見つけて、新しい冒険に出かけてみてはいかがでしょうか。



コメント