今なお多くの自動車ファンを魅了し続けるトヨタの名車「AE86(ハチロク)」。特にリトラクタブルヘッドライトが特徴的なスプリンタートレノは、人気漫画「頭文字D」の影響もあり、絶大な人気を誇ります。そんなAE86トレノには、製造時期によって「前期型」と「後期型」が存在することをご存知でしょうか。 一見すると同じように見える両者ですが、実は外装や内装、さらには走行性能に関わる部分まで、様々な違いがあります。
これからAE86トレノのオーナーになりたい方や、もっと深くハチロクを知りたい方のために、この記事では「AE86 トレノ 前期後期 違い」をテーマに、それぞれの特徴を誰にでも分かりやすく解説していきます。 この記事を読めば、あなたにぴったりの一台を見つけるための知識がきっと深まるはずです。
AE86トレノの前期・後期の違いとは?基本的な見分け方
AE86スプリンタートレノには、1985年5月に行われたマイナーチェンジを境に前期型と後期型が存在します。 これからAE86の世界に足を踏み入れる方のために、まずは基本的な違いと見分け方のポイントをご紹介します。大まかな違いを知っておくだけでも、街で見かけたハチロクがどちらのモデルなのかを判断できるようになりますよ。
製造期間で見る前期・後期の区分
AE86スプリンタートレノの前期型と後期型は、製造された期間によって明確に区別されます。
- 前期型: 1983年5月のデビューから1985年4月までに生産されたモデルを指します。 ファンの間では、さらに細かく「1型」「2型」と呼ばれることもあります。
- 後期型: 1985年5月のマイナーチェンジ後から1987年4月の生産終了までに生産されたモデルです。 こちらは通称「3型」と呼ばれています。
この1985年5月のマイナーチェンジを境に、外装や内装、さらには走行性能に関わる部分にも変更が加えられました。中古車市場でAE86トレノを探す際には、まずこの年式が前期型か後期型かを判断する基本的な指標となります。
パッと見でわかる!外装の主な変更点
AE86トレノの前期型と後期型を見分ける上で、最も分かりやすいのが外装の違いです。 特にフロントマスクとリアビューに特徴的な変更点が見られます。
- フロントバンパーとウインカー: 前期型のフロントウインカーはバンパーの正面に収まるコンパクトな形状ですが、後期型ではウインカーが大型化し、バンパー側面まで回り込むデザインに変更されました。 これにより、側面からの視認性が向上しています。 また、後期型ではフロントバンパーにコーナリングランプが追加されているのも大きな特徴です。
- テールランプ: リアのデザインも大きく異なります。前期型はナンバープレートの上に「TOYOTA」のプレートがありましたが、後期型ではこれが廃止されました。 さらに、後期型のテールランプは前期型に比べて横長のデザインとなり、トランクの形状もそれに合わせて変更されています。 そのため、前期と後期でテールランプの互換性はありません(2ドアの場合)。
これらのポイントを知っておけば、街中で見かけたAE86トレノが前期型か後期型かを瞬時に見分けることができるでしょう。
内装にもある?前期と後期の識別ポイント
外装だけでなく、内装にも前期型と後期型を見分けるためのポイントがいくつか存在します。運転席に座った際の印象が大きく異なるため、こだわりたい方にとっては重要なチェック項目です。
- 内装カラー: 前期型は赤系や青系のツートンカラーが設定されていましたが、後期型ではグレーとブラックを基調としたシックな内装色に統一されました。
- メーターパネル: メーターのデザインも変更されています。後期型のメーターはストライプが入ったデザインが特徴的で、スピードメーターやタコメーターの針が前期型よりも太くなっています。
- シート: シートのカラーリングはもちろん、ヘッドレストの形状も前期と後期で異なります。
これらの内装の違いは、車両の年式を特定する手がかりになるだけでなく、どちらの雰囲気が自分の好みに合うかを選ぶ際の重要な要素にもなります。
【外装編】AE86トレノ前期・後期の違いを徹底比較
ここでは、AE86トレノの前期型と後期型における外装の違いを、さらに詳しく掘り下げて見ていきましょう。細かな違いを知ることで、より深くAE86トレノの魅力を理解できます。中古車選びの際にも役立つ知識なので、ぜひチェックしてみてください。
フロントバンパーとウインカーのデザイン
前述の通り、フロント周りは前期と後期を見分ける上で最も分かりやすいポイントです。
前期型のフロントバンパーは、ウインカーがヘッドライトの真下にすっきりと収まっているのが特徴です。シンプルでクリーンな印象を与えます。
一方、後期型ではフロントウインカーが大型化し、レンズがバンパーの角を回り込むようにデザインされています。 これは当時の法規改正に対応し、側面からの被視認性を高めるための変更でした。 さらに、後期型のトレノにはバンパーの角にコーナリングランプが標準装備されており、夜間の右左折時に進行方向を照らしてくれます。 バンパー上部のグリル部分も、後期型の方が少しボリューム感のあるデザインに変更されています。
リアコンビネーションランプ(テールランプ)の意匠
リアビューの印象を大きく左右するのが、テールランプのデザインです。
前期型の3ドアトレノのテールランプは、ナンバープレートの両脇に配置され、その上には「TOYOTA」と書かれたガーニッシュ(飾り部品)が装着されていました。
それに対し、後期型ではこのガーニッシュが廃止され、テールランプ自体がよりワイドなデザインへと変更されました。 これにより、リアビューはよりスッキリと、そして現代的な印象になっています。この変更は、姉妹車であるレビンとの差別化を図り、トレノの販売を促進する目的もあったと言われています。
重要な点として、このテールランプのデザイン変更に伴い、特に2ドアモデルではトランクパネルやバックパネルの形状も異なっているため、前期型と後期型でテールランプユニットをそのまま交換することはできません。
ドアミラーの素材とカラーリング
ドアミラーも、細かながら前期と後期で違いが見られるポイントです。
製造時期によって、ミラーの形状や素材に違いがあります。特に初期のモデル(通称1型)には、スプリングで戻るタイプの固定式ミラーが採用されていました。 その後のモデルチェンジで、可倒式でデザインも変更されています。
一般的に、後期型のドアミラーは、前期型と比べて質感がザラザラしたものに変更されたと言われています。 中古車をチェックする際には、年式とミラーの仕様が一致しているかを確認するのも、オリジナル度を測る一つの方法です。
その他の細かな外装の違い
他にも、マニアが見ればわかる細かな違いがいくつか存在します。
- サイドモール: ボディサイドを走る黒いモール(保護材)は、前期型の方が後期型に比べて少し太いデザインになっています。 横から見た時の印象が微妙に異なります。
- フェンダーの塗装パターン: ツートンカラーのモデルにおいて、フロントフェンダーのアーチ部分の黒い塗装の範囲が異なります。 本来、後期型はウインカーの後ろあたりまで黒いラインが伸びていますが、前期仕様に変更されている車両では、この塗装パターンが後期型のまま残っている場合があります。
- フロントフェンダーのウインカーレンズ: フロントフェンダー側面にある小さなウインカーレンズも、前期と後期で形状や色が微妙に異なります。
これらの細かな違いは、一見しただけでは気づきにくいかもしれませんが、AE86トレノの歴史の深さを物語る興味深いポイントと言えるでしょう。
【内装編】インテリアから見る前期・後期の差異
続いては、ドライバーが常に触れることになる内装の違いについて詳しく見ていきましょう。前期型と後期型では、室内の雰囲気や装備に違いがあり、どちらを選ぶかによってカーライフの印象も変わってきます。鮮やかな前期か、シックな後期か、あなたの好みはどちらでしょうか。
メーターパネルのデザインとカラー
運転中に最も目にするメーターパネルは、前期と後期でデザインが大きく異なります。
前期型のメーターパネルは、比較的シンプルなデザインです。ボディカラーに応じて、赤系内装と青系内装があり、それに合わせたカラーリングが施されていました。
一方、後期型のメーターパネルは、盤面にストライプが入ったスポーティーなデザインが特徴です。 タコメーターやスピードメーターの針も前期型より太く、視認性が向上しています。 内装色がグレー/ブラック系に統一されたことに伴い、メーターパネルもシックな色合いになりました。 また、最上級グレードの「GT-APEX」には、デジタルメーターがオプションで設定されていました。
シートのデザインと素材の変更
長時間のドライブを支えるシートも、前期と後期で変更が加えられています。
最も大きな違いはカラーリングです。前期型では内装色に合わせて赤系や青系のシートが採用されていましたが、後期型ではグレー/ブラック系の落ち着いたデザインになりました。
また、デザインも細かく変更されています。例えば、ヘッドレストの形状が前期と後期で異なっており、より上質感を高める改良が施されました。 ドアトリム(ドアの内張り)も、後期型では布が張られる面積が広くなり、ドアポケットが大型化するなど、質感と実用性の両面で進化しています。
ステアリングホイールとシフトノブの意匠
ステアリングホイールやシフトノブといった操作系パーツのデザインも、年式によって違いがあります。
前期型と後期型では、ステアリングホイールのセンターパッドの形状やロゴのデザインが異なります。シフトノブも同様に、形状や材質に細かな変更が見られます。
ただし、これらのパーツは社外品に交換されているケースが非常に多いのが実情です。中古車を見る際には、オリジナルの状態がどうであったかを知っておくと、車両の状態をより正確に把握できます。
空調スイッチやセンターコンソールの違い
センターコンソール周辺の使い勝手も、後期型で改良されています。
特に分かりやすいのがエアコンの操作パネルです。前期型が文字表記中心だったのに対し、後期型ではイラストを用いた絵文字表記となり、より直感的に操作できるようになりました。
センターコンソールのデザインや収納スペースにも細かな変更が加えられており、全体的に後期型の方が洗練され、使いやすさが向上していると言えます。これらの違いは、日常的に車を使う上で快適性に影響を与える部分です。
【機関・走行性能編】走りの違いはあるのか?

見た目だけでなく、走りの面でも前期型と後期型には違いがあるのでしょうか。AE86の心臓部であるエンジン本体は共通ですが、駆動系を中心に信頼性や耐久性に関わる重要な改良が施されています。 特に走りを楽しみたい方にとっては見逃せないポイントです。
エンジン本体は同じ?補器類の違い
AE86に搭載されている心臓部、1.6L直列4気筒DOHCエンジンの「4A-GEU」型は、前期型と後期型でエンジン本体のスペック(最高出力130馬力)に変更はありません。 世代を超えて愛される名機としての基本設計は、モデルライフを通じて共通です。
ただし、エンジンを制御するコンピューター(ECU)やセンサー類といった補器類には、年式の経過とともに細かな改良が加えられている場合があります。これらの改良は、燃費や始動性、アイドリングの安定性といった日常的な使い勝手に影響を与える可能性があります。
なお、AE86とよく似たモデルに「AE85(ハチゴー)」がありますが、こちらは1.5L SOHCエンジンを搭載した廉価版モデルで、最高出力も異なり、走行性能は全くの別物です。
ドライブシャフトの太さと耐久性
走行性能に関わる最も大きな変更点が、ドライブシャフトの強化です。
この問題を解消するため、1985年のマイナーチェンジで、後期型にはより太い径(約25mm)のドライブシャフトが採用されました。 これにより、駆動系の剛性と耐久性が大幅に向上し、より安心して走りを楽しめるようになっています。 走りを楽しみたいと考えている方にとって、これは後期型を選ぶ非常に大きなメリットと言えるでしょう。
その他の駆動系・足回りの変更点
ドライブシャフト以外にも、細かな改良が加えられています。
例えば、ミッションやデファレンシャルギアなどの駆動系部品も、年次改良によって信頼性が向上している部分があります。足回りに関しても、ブッシュ類などの細かな仕様変更が行われている可能性があります。
ただし、ノーマルのまま現存している車両は少なく、多くの場合、サスペンションやブレーキなどが交換・強化されています。 そのため、中古車を選ぶ際は、前期・後期の違いだけでなく、その車両がどのようなメンテナンスやカスタムをされてきたかという個体差の方が、実際の走行性能に大きく影響するケースが多いでしょう。
中古車選びで知っておきたい!前期・後期の注意点
これからAE86トレノのオーナーを目指す方にとって、前期と後期のどちらを選ぶべきかは悩ましい問題です。それぞれのメリット・デメリットを理解し、自分のカーライフに合った一台を見つけましょう。どちらのモデルも素晴らしい魅力を持っています。
前期モデルを選ぶメリット・デメリット
メリット:
- 「頭文字D」仕様の再現性: 主人公・藤原拓海の愛車は前期型トレノがベースです。 そのため、作品の世界観を忠実に再現したいファンにとっては、前期型が絶対的な選択肢となります。中古車市場でも、この理由から前期型は非常に高い人気を誇ります。
- クラシカルな内外装: シンプルなフロントマスクや、赤・青系の内装など、より80年代らしいクラシカルな雰囲気を味わえるのは前期型の魅力です。
デメリット:
- 駆動系の弱さ: 前述の通り、ドライブシャフトの耐久性に不安があります。 スポーツ走行を考えている場合は、後期用の部品に交換するなどの対策が必要になる場合があります。
- 価格の高騰: 人気の高さから、後期型に比べて中古車価格が高騰する傾向にあります。 状態の良い個体は非常に高値で取引されています。
後期モデルを選ぶメリット・デメリット
メリット:
- 信頼性の高さ: 強化されたドライブシャフトをはじめ、各部が改良されているため、全体的な信頼性や耐久性が高いのが最大のメリットです。
- 洗練された内外装: 大型化されたウインカーや横長のテールランプ、シックな内装など、より洗練されたデザインを持っています。
- AT車の設定: 後期型からはオートマチック(AT)車も追加されました。
デメリット:
- 「頭文字D」仕様との違い: 作品の仕様を完全に再現したい場合には、フロントバンパーやテールランプなどを前期仕様に変更(コンバート)する必要があります。
- クラシカルな雰囲気の薄れ: 内装色などが落ち着いたデザインのため、前期型のような鮮烈な80年代の雰囲気は少し薄れるかもしれません。
購入前にチェックすべきポイント
AE86はデビューから40年以上が経過した旧車です。前期・後期どちらを選ぶにせよ、購入前には以下の点をしっかりチェックすることが重要です。
- ボディの状態: 最も重要なのがボディのサビや腐食です。特にリアフェンダーのアーチ部分やピラーの付け根などはサビやすいポイントと言われています。修復歴の有無と合わせて、ボディの状態を最優先で確認しましょう。
- 部品の欠品: 内外装の部品は廃盤になっているものも多く、入手が困難な場合があります。オリジナルの状態を保ちたい場合は、部品が揃っているかどうかも重要です。
- メンテナンス履歴: これまでどのようなメンテナンスや修理、部品交換が行われてきたかを確認しましょう。記録がしっかり残っている車両は、状態を把握しやすく安心です。
まとめ:AE86トレノの前期・後期の違いを理解して理想の一台を

AE86スプリンタートレノの前期型と後期型には、1985年5月のマイナーチェンジを境に、外装デザイン、内装の雰囲気、そして駆動系の信頼性など、多岐にわたる違いが存在します。
外装ではフロントウインカーやテールランプのデザインが最も分かりやすい識別点であり、内装ではカラーリングやメーターパネルの意匠が異なります。 そして、走りの面では後期型でドライブシャフトが強化されている点が大きなポイントです。
「頭文字D」への憧れからクラシカルな前期型を選ぶのか、信頼性や洗練されたデザインを重視して後期型を選ぶのかは、オーナーとなるあなたの価値観次第です。この記事で紹介した違いを参考に、それぞれのモデルの魅力を深く理解し、あなたにとって最高のパートナーとなるAE86トレノを見つけてください。



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