今なお多くのファンを魅了し続けるトヨタのスポーツカー「AE86(ハチロク)」。その中でも、固定式ヘッドライトが特徴的な「カローラレビン」は、兄弟車であるスプリンタートレノと並び高い人気を誇ります。1983年から1987年という短い販売期間の中で、AE86レビンはマイナーチェンジを経て「前期型」と「後期型」に分かれます。
これからAE86レビンの購入を検討している方や、街で見かけたハチロクが前期か後期か気になっている方にとって、両者の違いは大きな関心事ではないでしょうか。見た目のデザインから内装の質感、さらには走りに関わるメカニズムまで、前期と後期では細かな変更点が多く存在します。この記事では、そんなAE86レビンの前期・後期モデルの違いについて、外装、内装、性能の3つのポイントから、初心者にも分かりやすく解説していきます。
AE86レビン前期・後期の違いとは?まずは基本情報をチェック

AE86レビンの前期型と後期型の違いを詳しく見ていく前に、まずはAE86がどのような車なのか、そして前期・後期がいつのモデルを指すのかといった基本的な情報を押さえておきましょう。これらの背景を知ることで、なぜ違いが生まれたのか、それぞれのモデルが持つ特徴への理解がより深まります。
AE86レビンとはどんな車?
AE86とは、1983年5月から1987年5月までトヨタ自動車が生産・販売した4代目カローラレビン/スプリンタートレノのうち、1.6L DOHCエンジン「4A-GEU」を搭載したモデルの共通車両型式番号です。 その型式番号から「ハチロク」の愛称で親しまれています。
レビンとトレノは基本構造を共有する姉妹車ですが、フロントマスクのデザインが異なり、レビンは固定式のヘッドライト、トレノは当時流行したリトラクタブルヘッドライトを採用しているのが最大の違いです。
前期・後期モデルの販売期間
AE86は、その販売期間中に複数回の改良が行われています。一般的に、ファンや専門家の間では以下のように分類されています。
| 通称 | モデル | 販売期間 |
|---|---|---|
| 前期型 (I型) | デビューモデル | 1983年5月~1984年 |
| 中期型 (II型) | 一部改良後 | 1984年~1985年5月 |
| 後期型 (III型) | マイナーチェンジ後 | 1985年5月~1987年5月 |
中期型(II型)も存在しますが、外観の多くは後期型に準じているため、大きく「前期型」と「後期型」の2つに分けて語られることが一般的です。 この記事でも、主に1985年5月のマイナーチェンジを境にした前期・後期での違いを解説していきます。
なぜ前期と後期で仕様変更が行われたのか?
自動車メーカーがモデルライフの途中で仕様変更(マイナーチェンジ)を行うのは、主に以下のような理由が挙げられます。
- 商品性の向上: ユーザーからのフィードバックや市場のトレンドを反映し、デザインや装備をより魅力的にするため。
- 安全性の強化: 法規の変更に対応したり、より高い安全性能を確保したりするため。
- 走行性能の改善: 初期モデルで見つかった課題を克服し、より信頼性や走行性能を高めるため。
AE86レビンにおいても、より洗練されたデザインや安全性の向上、そしてスポーツ走行における信頼性を高めるための改良が、前期型から後期型にかけて行われました。 これらの変更点は、AE86という車がユーザーと共に成熟していった証とも言えるでしょう。
【外装編】一目でわかる!AE86レビン前期・後期の見分け方
AE86レビンの前期型と後期型を最も簡単に見分ける方法は、外装(エクステリア)の違いをチェックすることです。特にフロントマスクとリアビューには、それぞれの年代を象徴する特徴的なデザインが採用されています。ここでは、具体的な見分けポイントをパーツごとに詳しく見ていきましょう。
フロントバンパーとウインカーのデザイン
フロント周りは、前期と後期で印象が大きく変わるポイントです。
- フロントウインカー: 前期型のウインカーは、ヘッドライトの真下に収まるコンパクトな形状です。 一方で後期型は、ウインカーレンズが大型化され、バンパーの側面まで回り込む「ラップアラウンドタイプ」に変更されました。 これにより、斜め方向からの視認性が向上し、安全性が高まっています。
- フロントグリル: 前期型の最上級グレード「GT-APEX」には、「エアロダイナミックグリル」と呼ばれる、水温に応じて開閉する特殊なグリルが採用されていました。 しかし、吸気効率の面で課題があったためか、後期型では全グレードでスリットのないシンプルなデザインのグリルに統一されています。
テールランプの意匠変更
リアビューも、前期・後期を見分ける上で重要なポイントです。
前期型のテールランプは、比較的シンプルなデザインでした。 これに対して後期型では、テールランプのデザインが横長に拡大され、よりワイドで安定感のある印象になりました。
具体的には、レビンの場合、テールランプ上部に白いライン(グレア光カットモール)が入っているのが後期型の特徴です。 また、この変更に伴いトランクパネルの形状も変わっているため、前期と後期でテールランプの互換性はありません。
サイドモールのカラーリング
ボディサイドに装着されているサイドモールのデザインも、前期と後期で違いがあります。
特にツートンカラーのボディの場合、前期型ではサイドモール部分もボディカラーに合わせて塗り分けられていましたが、後期型ではブラックで統一される傾向にあります。 これにより、後期型は全体的に引き締まったシャープな印象を与えます。ただし、グレードやボディカラーによって仕様が異なる場合があるため、あくまで参考の一つとして捉えてください。
ドアミラーの素材とデザイン
見過ごしがちなポイントですが、ドアミラーにも違いがあります。
前期型のドアミラーは細長い形状で、艶のある黒色でした。 これに対し、後期型ではミラー本体が少し厚みを増し、艶消しの黒色に変更されています。 ただし、ドアミラーは交換されている可能性も高いため、これだけで前期・後期を判断するのは難しいかもしれません。他のパーツと合わせて総合的に判断するのが良いでしょう。
【内装編】快適性とデザイン性の進化!前期・後期の違い

外装だけでなく、ドライバーが常に触れる内装(インテリア)にも前期型と後期型では多くの違いが見られます。カラーリングの変更による雰囲気の違いはもちろん、メーターのデザインやスイッチ類の配置など、操作性や視認性に関わる改良も施されました。
インパネ・メーター周りのデザイン変更
運転席に座ってまず目に入るインパネ周りは、前期と後期で大きく印象が異なります。
- 全体のカラーリング: 前期型の内装は、ブラウンやワインレッドといった暖色系のカラーが基調でした。それに対し、後期型ではブラックやグレーを基調としたシックでスポーティな印象のカラーリングに変更されています。
- メーターデザイン: メーターのデザインも特徴的です。前期型は比較的オーソドックスなデザインですが、後期型のメーターは文字盤にストライプのデザインが入り、スピードメーターやタコメーターの針が太く、より存在感のあるデザインになりました。
- スイッチ類: エアコンの操作パネルや各種スイッチのデザイン、配置も変更されています。後期型の方がより機能的に整理され、操作性が向上していると言えるでしょう。
シートの素材とデザイン
長距離のドライブやスポーツ走行で体を支えるシートも、前期と後期で進化しています。
前期型のシートは、グレードによって異なりますが、比較的シンプルなデザインのものが多く採用されていました。一方、後期型の「GT-APEX」などの上級グレードでは、サイドサポート(体の横を支える部分)がよりしっかりとした形状のスポーツシートが採用され、ホールド性が向上しています。表皮のデザインも変更され、よりスポーティな雰囲気を演出しています。
ステアリングホイールの形状
ステアリングホイールのデザインも変更点の一つです。前期型は2本スポークのデザインが主流でしたが、後期型では3本スポークのデザインが採用されるようになりました。3本スポークのステアリングは、よりスポーティな印象を与えるだけでなく、握りやすさや操作性の面でも改良が加えられています。
センターコンソールの違い
運転席と助手席の間にあるセンターコンソールも、前期と後期でデザインが異なります。後期型では、収納スペースの形状やサイドブレーキレバー周りのデザインが見直され、使い勝手が向上しています。また、後期型からは電子制御4速AT(ECT-S)が設定されたため、AT車のシフトレバー周りのデザインも前期型にはないものです。
【性能・メカニズム編】走りの進化!前期・後期の違い
見た目のデザインだけでなく、AE86レビンの魅力の核心である「走り」に関わる部分でも、前期型と後期型では改良が加えられています。エンジン本体に大きな変更はありませんが、駆動系やブレーキなど、よりハードな走行に対応するための信頼性向上が図られています。
エンジン・補機類の改良点
AE86に搭載されている名機「4A-GEU」エンジン(1.6L DOHC)の基本スペック(最高出力130馬力)は、前期・後期で共通です。 しかし、細かな部分で改良が加えられています。
- ECU(エンジンコントロールユニット): 後期型ではECUのセッティングが変更され、レブリミッターの作動回転数が前期型の7700回転から7500回転に引き下げられたと言われています。
- シリンダーブロック: 後期型ではシリンダーブロックの剛性が向上しているとの情報もあります。 これは、エンジンの耐久性や信頼性を高めるための改良と考えられます。
これらの変更は体感できるほどの大きな差ではありませんが、より熟成が進んだのが後期型と言えるでしょう。
トランスミッションとデフの強化
駆動系は、前期と後期で最も大きな違いがある部分の一つです。
特に、後輪へ動力を伝えるドライブシャフトが後期型で強化されました。 前期型のドライブシャフトは、スポーツ走行などで大きな負荷がかかるとスプライン部(シャフトのギザギザの部分)がねじ切れてしまうトラブルが報告されていました。
そこで後期型では、ドライブシャフトが太いものに変更され、耐久性が大幅に向上しています。 これに伴い、ディファレンシャルギア(デフ)の内部構造も変更されているため、前期と後期でドライブシャフトやデフの互換性はないので注意が必要です。
ブレーキ性能の向上
前期と後期では、ブレーキマスターシリンダーの容量など、ブレーキシステムにも細かな変更が加えられています。これにより、より安定した制動力を発揮できるようになり、スポーツ走行における安心感が高まっています。ただし、基本的なブレーキの構造(フロント:ベンチレーテッドディスク、リア:ディスク)はAE86のGT系グレードで共通です。
購入前に知っておきたい!前期・後期の選び方と注意点
これまで見てきたように、AE86レビンの前期型と後期型にはそれぞれ異なる特徴と魅力があります。これから購入を検討する際には、どちらのモデルが自分の好みや用途に合っているかを考えることが大切です。ここでは、それぞれのモデルの魅力と注意点、そして中古車市場での傾向について解説します。
前期型の魅力と注意点
魅力:
前期型の最大の魅力は、なんといってもデビュー当時のオリジナルに近いスタイルです。コンパクトなフロントウインカーや暖色系の内装など、1980年代初頭の雰囲気を色濃く残しています。発売から年月が経過しているため、程度の良い個体は非常に希少価値が高まっています。オリジナリティを重視する方や、ノスタルジックな雰囲気が好きな方には前期型がおすすめです。
注意点:
性能面で解説した通り、前期型はドライブシャフトの強度が後期型に比べて劣ります。 サーキット走行など、ハードな使い方を想定している場合は、後期型の駆動系に換装するなどの対策が必要になる場合があります。また、生産から40年以上が経過しているため、内外装の経年劣化や部品の欠品は後期型以上に覚悟が必要です。
後期型の魅力と注意点
魅力:
後期型の魅力は、熟成された完成度の高さです。外観はより洗練され、内装はスポーティな雰囲気が強まりました。何より、ドライブシャフトの強化をはじめとする各部の信頼性向上は大きなメリットです。 これからAE86で走りを楽しみたい、あるいは安心して長く乗りたいという方には、後期型の方が適していると言えるでしょう。AT車の設定があるのも後期型のみです。
注意点:
前期型に比べれば比較的新しいとはいえ、最終モデルでも生産終了から35年以上が経過しています。基本的なメンテナンスや部品交換の必要性は前期型と変わりません。中古車市場では前期型よりもタマ数が多く見つかりやすいですが、その分、個体のコンディションにはバラつきがあるため、購入時には慎重な見極めが必要です。
中古車市場での価格差
AE86は現在、世界的な人気から中古車価格が高騰しています。前期・後期のどちらが明確に高いということは一概には言えません。
- 前期型: 生産台数が少なく希少性が高いため、フルオリジナルで状態の良い個体は非常に高値で取引される傾向にあります。
- 後期型: 信頼性の高さや走りのイメージから人気が集中し、こちらも高値安定の状況が続いています。
最終的な価格は、年式だけでなく、車両の状態(修復歴の有無、走行距離、内外装の綺麗さ)、改造の有無など、様々な要素によって大きく変動します。購入を検討する際は、複数の販売店を比較し、信頼できる専門家のアドバイスを求めることを強くお勧めします。
まとめ:AE86レビンの前期・後期の違いを理解して理想の一台を

今回は、AE86カローラレビンの前期型と後期型の違いについて、外装・内装・性能の観点から詳しく解説しました。
主な違いをまとめると以下のようになります。
- 外装: 後期型はフロントウインカーが大型化し、テールランプのデザインも変更され、より洗練された印象に。
- 内装: 後期型はブラック基調のスポーティな内装色になり、メーターやシートのデザインも変更。
- 性能: 後期型はドライブシャフトが強化されるなど、走行性能の信頼性が向上。
デビュー当時のノスタルジックな雰囲気を味わいたいなら前期型、熟成された完成度と信頼性を求めるなら後期型が、一つの選択基準になるでしょう。
どちらのモデルにもそれぞれの魅力があり、優劣をつけることはできません。この記事で紹介した違いを参考に、ぜひご自身の好みやカーライフに合った、最高のAE86レビンを見つけてください。



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