軽自動車の購入を検討する際、特に気になるのが「後部座席の使い勝手」ではないでしょうか。スズキのアルトは、優れた燃費性能と手頃な価格で人気の車種ですが、「後部座席は狭いのでは?」「大人が乗るのは厳しいかな?」といったイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
この記事では、そんなアルトの後部座席に焦点を当て、実際の広さや乗り心地、便利なシートアレンジの方法、さらにはファミリーでの利用シーンまで、皆さんが知りたい情報を詳しく解説していきます。現行モデルと先代モデルの違いにも触れながら、アルトの後部座-席が持つ本当の実力を明らかにしていきますので、ぜひ車選びの参考にしてください。
アルトの後部座席、実際の広さと乗り心地は?

スズキ アルトの後部座席と聞くと、コンパクトなボディサイズから「狭くて乗り心地は二の次」という印象を持つかもしれません。しかし、特に現行の9代目アルトは、先代モデルから室内空間が見直され、居住性が向上しています。ここでは、大人が乗った場合のスペースやリアルな乗り心地、そしてライバル車との比較を通じて、アルトの後部座席の実力を検証していきましょう。
大人が乗っても大丈夫?足元と頭上のスペースをチェック
実際に大人が座った場合、身長175cm程度の方でも窮屈さを感じにくいスペースが確保されています。 先代モデルでは少し圧迫感があった頭上空間が改善されたことで、開放感が増しています。
足元空間に関しても、ホイールベース(前輪と後輪の間の距離)が延長された恩恵で、広々としています。 身長が高い方でも快適に座れるよう設計されており、足を組むほどの余裕はないものの、長距離移動でも疲れにくい空間が確保されていると言えるでしょう。
ただし、室内幅は軽自動車の規格内で設計されているため、大人2名が座るとちょうど良いサイズ感です。3人並んで座ることはできませんが、日常的な送迎や短距離の移動であれば、大人でも十分に快適に過ごせる空間が広がっています。
気になる乗り心地は?クッション性や静粛性
アルトの後部座席の乗り心地は、モデルチェンジを経て着実に進化しています。特に現行モデルは、静粛性が高く、乗り心地も優秀との評価が見られます。
シートのクッション性については、見た目はフラットなベンチシートですが、実際に座ると適度にお尻が沈み込み、体にフィットするよう工夫されています。 座面も少し後ろ下がりの設計になっているため、体が滑りにくく、安定した姿勢を保ちやすいのが特徴です。
一方で、一部の口コミでは「後部座席のシートはフラットな構造でホールド性が低い」という意見も見られます。 カーブなどで体が左右に振られやすいと感じる場面もあるかもしれませんが、街乗りがメインであれば大きな不満は出にくいレベルと言えるでしょう。
また、静粛性に関しては、現行モデルで大幅な改善が見られます。エンジン音やロードノイズの侵入が抑えられており、会話も楽しみやすい快適な室内空間が実現されています。
窓の広さや開放感はどうか
現行の9代目アルトは、サイドウィンドウの下端を先代モデルより約35mm下げることで、側方や斜め後方の視界が向上しています。 これにより、後部座席からの眺めが良くなり、開放感が大きくアップしました。
窓が大きくなったことで車内に光が入りやすくなり、明るく広々とした印象を与えてくれます。特に小さな子供を乗せる場合、外の景色が見やすいと退屈しにくくなるというメリットもあります。
先代の8代目アルトも明るい内装色で開放感を演出していましたが、現行モデルは物理的な窓の大きさとスクエアなデザインによって、より一層の広がりを感じられる空間となっています。
ライバル車(ミライースなど)との広さ比較
アルトの直接的なライバルとなるのが、ダイハツの「ミライース」です。両車を比較すると、室内空間の広さにはそれぞれ特徴があります。
| 車種 | 室内長 | 室内幅 | 室内高 |
|---|---|---|---|
| スズキ アルト | 2,015mm | 1,280mm | 1,260mm |
| ダイハツ ミライース | 2,025mm | 1,305mm | 1,240mm |
※数値はグレードや装備によって異なる場合があります。
表を見ると、アルトはミライースに比べて室内高が高いのが特徴です。 この高さが、頭上空間の余裕と開放感につながっています。一方、ミライースは室内長と室内幅でわずかにアルトを上回ります。
どちらも軽セダンとしては最大限のスペースを確保しようと工夫されていますが、縦方向のゆとりを重視するならアルト、横方向の広さを求めるならミライース、という見方ができるかもしれません。ただし、その差は僅かであり、実際に座ってみて体感的な広さを比較することが重要です。
後部座席の使い勝手とシートアレンジ

アルトの後部座席は、人を乗せるだけでなく、荷物を積むためのスペースとしても非常に重要な役割を果たします。ここでは、後部座席を倒して荷室を広げる方法や、その際の広さ、そして知っておきたいシートの仕様について詳しく解説します。日常の買い物から少し大きな荷物を運びたい時まで、アルトのシートアレンジを使いこなしましょう。
後部座席の基本的な倒し方と手順
アルトの後部座席は、簡単な操作で前に倒すことができ、荷室を拡大することが可能です。 基本的な手順は以下の通りです。
- ヘッドレストを外す(または一番下に下げる)
- 背もたれをスムーズに倒すため、まずは後部座席のヘッドレストを外すか、一番低い位置まで下げます。
- ※グレードによってはヘッドレストがない、または一体型の場合もあります。
- 背もたれのロックを解除する
- 後部座席の肩口あたりにあるロック解除ノブ(またはレバー)を引き上げます。
- 背もたれを前に倒す
- ロックが解除された状態で、背もたれをゆっくりと前方に倒します。
このシンプルな手順で、後部座席のスペースを広大な荷室に変えることができます。操作は力も要らず、女性でも簡単に行えるのが嬉しいポイントです。
倒すとどれくらい広くなる?荷室の容量と積めるもの
後部座席を倒すことで、荷室の床面長は劇的に広がります。
- 後部座席使用時(4人乗車時)の荷室床面長:約425mm
- 後部座席格納時の荷室床面長:約1,225mm
奥行きが約3倍近くまで広がり、日常の買い物カゴはもちろん、スーツケースやゴルフバッグ、折りたたんだ自転車など、ある程度の大きさや長さのある荷物も積載可能になります。
ただし、車中泊を考えている場合、完全にフラットにはならないため、快適に寝るためにはマットを敷くなどの工夫が必要です。
一体可倒式と分割可倒式の違いとは?
アルトの後部座席には、グレードによって「一体可倒式」と「5:5分割可倒式」の2種類のシートアレンジが用意されています。
- 一体可倒式
- 後部座席の背もたれが左右一体で倒れるタイプです。
- 操作がシンプルで、大きな荷物を一つ積む際に便利です。
- ただし、後部座席を倒すと2人乗りになってしまいます。
- 5:5分割可倒式
- 後部座席の背もたれが左右独立して倒せるタイプです。
- 例えば、左側だけを倒してスキー板のような長い荷物を積みながら、右側の後部座席に人が乗る、といった使い方が可能です。
- これにより、「3人乗車+荷物」という柔軟なシートアレンジが実現します。
乗車人数と積みたい荷物のバランスを考えるなら、分割可倒式が圧倒的に便利です。 購入時には、希望のグレードがどちらの方式を採用しているか、必ず確認するようにしましょう。
残念ながらリクライニング機能は非搭載
アルトの後部座席には、残念ながら背もたれの角度を調整するリクライニング機能や、座席を前後に動かすスライド機能は装備されていません。
これは、コストパフォーマンスを重視したアルトの設計思想によるものです。シートの角度は固定されているため、乗る人によっては長距離ドライブで疲れを感じる可能性もあります。
しかし、前述の通り、シート自体の座り心地は決して悪くなく、日常的な使用であれば大きな問題にはならないでしょう。 もしリクライニング機能が必須という場合は、ワゴンRなど他の車種を検討する必要があります。
ファミリー利用でのチェックポイント

軽自動車をファミリーカーとして検討する際、特に後部座席の安全性や子供の使い勝手は重要なポイントになります。アルトは経済的で魅力的な選択肢ですが、家族で使うにはどのような点を確認すれば良いのでしょうか。ここでは、チャイルドシートの設置から子供の乗り降りのしやすさ、安全性に関わる装備まで、ファミリー利用で気になる点を詳しく解説します。
チャイルドシートは設置できる?ISOFIXアンカーの有無
ISOFIXとは、チャイルドシートのコネクターを車両側の金具に差し込むだけで固定できる国際標準規格のことです。シートベルトで固定するタイプに比べて、取り付けミスが少なく、より安全性が高いとされています。
アルトは後部座席の左右両方にこのアンカーを備えているため、チャイルドシートを2台設置することも可能です。 これからお子様が生まれるご家庭や、小さなお子様がいるファミリーでも安心して選ぶことができます。
ただし、取り付けるチャイルドシートのサイズや形状によっては、運転席や助手席のスライド位置に影響が出る場合もあります。購入前に、実際に使用するチャイルドシートを載せてみて、前席とのクリアランスなどを確認することをおすすめします。
子供の乗り降りはしやすい?ドアの開口部と高さ
現行の9代目アルトは、後部ドアの使い勝手も向上しています。ドアの開閉角度がほぼ90度まで大きく開くため、乗り降りの際に広いスペースを確保できます。
これは、子供を抱っこしながら乗り降りさせたり、チャイルドシートに座らせたりする際に非常に便利です。また、ドアの開口部も広く設計されているため、頭をぶつける心配も少ないでしょう。
車高はスーパーハイトワゴン(スペーシアやN-BOXなど)ほど高くはありませんが、その分、床面が低く、小さなお子様が自分で乗り降りする際にもステップを使いやすいというメリットがあります。雨の日など、素早く子供を車内に乗せたい場面でも、スムーズな動作を助けてくれます。
後部座席の安全性(ヘッドレスト、シートベルトなど)
家族を乗せる上で、後部座席の安全装備は欠かせません。アルトの後部座席には、万が一の際に乗員を守るための基本的な安全装備が備わっています。
- リアシートヘッドレスト
- 追突された際に首への衝撃を和らげる重要なパーツです。現行モデルでは、上級グレードや「アップグレードパッケージ」を装着することで、後席にも高さ調整が可能な分割式のヘッドレストが装備されます。
- 先代の8代目では背もたれと一体型のものが主流でしたが、現行モデルでは快適性と安全性が向上しています。後部座席に人を乗せる機会が多い場合は、ヘッドレスト付きのグレードを選ぶことを強くおすすめします。
- 3点式シートベルト
- 後部座席の左右両席に、腰と肩をしっかり固定する3点式シートベルトが標準装備されています。
これらの装備により、アルトはコストパフォーマンスを重視しながらも、後部座席の安全性をしっかりと確保しています。
モデル別に見る後部座席の特徴(現行・先代)
スズキ アルトは長い歴史を持つモデルであり、特に中古車市場では様々な世代のアルトが流通しています。ここでは、現在新車で購入できる「現行・9代目」と、中古車として人気の高い「先代・8代目」に焦点を当て、後部座席の設計思想や特徴、そして選ぶ際の注意点を比較・解説していきます。どちらのモデルがあなたの使い方に合っているか、見極める参考にしてください。
【現行・9代目】快適性が向上した後部座席
2021年12月に登場した現行の9代目アルトは、「快適性」と「居住性」を大幅に向上させた点が最大の特徴です。
先代モデルと比較して全高を50mm高くし、室内高を45mm拡大したことで、特に後部座席の頭上空間に大きなゆとりが生まれました。 これにより、大人が乗っても圧迫感が少なく、開放的な空間を実現しています。
また、室内幅も25mm拡大されており、後席のショルダールーム(肩周りのスペース)も広くなっています。 シートのクッション性や静粛性も見直され、乗り心地が格段に良くなっている点も見逃せません。
【先代・8代目】割り切った設計の後部座席
2014年から2021年まで販売された先代の8代目アルトは、徹底した軽量化と燃費性能の追求をコンセプトに開発されました。 そのため、後部座席はどちらかというと補助的な位置づけで、シンプルな設計となっています。
特徴的なのは、全高が1,475mmと低めに設定されている点です。 これにより、スポーティな外観と優れた空力性能を実現しましたが、後部座席の頭上空間は現行モデルに比べるとややタイトに感じられるかもしれません。
ただし、ホイールベースは2,460mmと当時としては長く、足元空間は十分に確保されていました。 大人でも問題なく座れるスペースはありますが、快適性よりも実用性や経済性を重視した設計と言えます。シートは背もたれとヘッドレストが一体型になっているものが多く、後部座席は主に荷物置き場として使う、あるいは短距離の送迎がメインという方に適しています。
中古車でアルトを選ぶ際の注意点
中古車でアルトを選ぶ際は、年式や走行距離だけでなく、後部座席の仕様にも注目することが大切です。
- 快適性を重視するなら9代目がおすすめ
- 後部座席に人を乗せる機会が多い、少しでも快適な方が良いという場合は、迷わず現行の9代目モデルを探すのが良いでしょう。
- 8代目を選ぶならグレードの確認を
- 価格の手頃さで8代目を選ぶ場合、後部座席の仕様はグレードによって異なります。例えば、商用の「バン」モデルは後部座席が非常に簡素な作りになっているため、乗用目的には向きません。 乗用グレードの中でも、ヘッドレストの有無やシート生地の違いなどがありますので、実車を確認することをおすすめします。
- シートアレンジの方式
- 前述の通り、一体可倒式か分割可倒式かは使い勝手に大きく影響します。3人以上で乗る機会があるか、長い荷物を積む可能性があるかを考慮して、分割可倒式のグレードを選ぶと後悔が少ないでしょう。
まとめ:アルトの後部座席はこんな人におすすめ

この記事では、スズキ アルトの後部座席について、広さ、乗り心地、シートアレンジ、ファミリーでの使い勝手など、様々な角度から詳しく解説してきました。
アルトの後部座席は、かつての「軽自動車だから狭い」というイメージを覆し、特に現行の9代目モデルでは大人でも快適に過ごせる居住空間を実現しています。
アルトの後部座席のポイント
- 広さ:現行モデルは室内高が高く、頭上空間にゆとりがある。足元も広く、大人が乗っても窮屈さを感じにくい。
- 乗り心地:見た目以上にクッション性が良く、静粛性も向上しているため快適。
- シートアレンジ:簡単な操作で後部座席を倒せ、ほぼフラットで広大な荷室を作り出せる。 3人乗車と荷物の積載を両立できる「分割可倒式」が便利。
- ファミリー利用:ISOFIXアンカーが標準装備でチャイルドシートの取り付けも安心。 ドアが約90度開くため子供の乗り降りもさせやすい。
これらの特徴から、アルトの後部座席は以下のような方に特におすすめです。
- 普段は1〜2人で乗ることが多いが、たまに友人や家族を後ろに乗せたい方
- コストパフォーマンスを重視しつつも、後部座席の快適性を諦めたくない方
- チャイルドシートを装着するファミリーで、経済的なセカンドカーを探している方
- 後部座席を倒して、大きな荷物や趣味の道具を積む機会がある方
リクライニング機能がないなど割り切りも必要ですが、アルトの後部座席は価格や燃費性能を考えれば十分に満足できる実力を持っています。ぜひ一度、実際にディーラーで後部座席に座って、その広さと快適性を体感してみてください。



コメント