レトロで個性的なデザインと、本格的なオフロード性能で今なお多くのファンを魅了するトヨタ FJクルーザー。2018年に国内販売が終了してからもその人気は衰えず、中古車市場で探している方も多いのではないでしょうか。しかし、生産終了から年数が経過していることもあり、「FJクルーザーは故障が多いのでは?」「維持費がかかるのでは?」といった不安の声を耳にすることもあります。
たしかに、どんな車でも経年劣化による故障は避けられませんし、FJクルーザーにも特有のウィークポイント、いわゆる「持病」と呼ばれる箇所が存在します。ですが、基本的な構造は非常に頑丈で、適切なメンテナンスを行えば長く乗り続けることができるタフな車です。
この記事では、FJクルーザーの購入を検討している方や、すでにオーナーで今後のメンテナンスに不安を感じている方のために、よくある故障事例とその原因、修理費用の目安、そして愛車と長く付き合うためのメンテナンスのコツを、分かりやすく解説していきます。
FJクルーザーでよくある故障と症状

FJクルーザーは、ランドクルーザープラドなどと共通の頑丈なラダーフレーム構造や信頼性の高いエンジンを搭載しており、基本的には壊れにくい車です。 しかし、年式や走行距離、使用状況によっては、特定の箇所にトラブルが発生しやすくなる傾向があります。ここでは、FJクルーザーの「持病」や「弱点」ともいわれる代表的な故障事例を5つご紹介します。
ラジエーターからの水漏れ
FJクルーザーのトラブルとして比較的よく報告されるのが、ラジエーターからの冷却水漏れです。 ラジエーターは、高温になったエンジンを冷却水(クーラント)によって冷やすための重要な装置です。
主な原因は、ラジエーター本体とアッパータンク(上部の樹脂製タンク)のかしめ部分の劣化です。経年劣化やエンジンの振動により、この部分に隙間が生じて冷却水が漏れ出してしまいます。 冷却水が漏れると、エンジンを適切に冷却できなくなり、最悪の場合オーバーヒートを引き起こし、エンジンに深刻なダメージを与えてしまう可能性があります。
エンジンルームから甘い匂い(冷却水の匂い)がしないか
駐車場の地面に緑や赤色の液体が漏れた跡がないか
* 水温計が異常に高い位置を指していないか
もし水漏れを発見した場合は、速やかに修理工場に相談しましょう。修理費用は、ラジエーター本体を交換する場合、部品代と工賃を合わせて5万円〜10万円程度が目安となりますが、状態によってはより高額になることもあります。
ドライブシャフトブーツの破れ
ドライブシャフトブーツの破れも、FJクルーザーでよく見られるトラブルの一つです。 ドライブシャフトは、エンジンの力をタイヤに伝えるための重要な部品で、その関節部分(ジョイント)を保護しているのがゴム製のブーツです。
特にリフトアップカスタムをしている車両は、ドライブシャフトの角度が急になるため、ブーツに負担がかかりやすく、亀裂が入ったり破れたりしやすくなります。 ブーツが破れると、内部の潤滑グリスが飛び散り、そこに砂や水分が侵入してしまいます。これを放置すると、ジョイント部分が摩耗し、「カリカリ」「ゴトゴト」といった異音が発生し始め、最終的にはドライブシャフト本体の交換が必要になることもあります。
ドライブシャフトブーツの破れは車検に通らないため、発見次第、交換が必要です。 修理費用は、交換するブーツの種類(純正品か分割式か)や、作業を依頼する工場によって異なりますが、片側1箇所あたり1万5,000円〜3万円程度が目安です。
ブレーキ関連のトラブル
FJクルーザーは車重があるため、ブレーキ系統にも負担がかかりやすい傾向があります。特に注意したいのが、ブレーキジャダーです。ブレーキジャダーとは、ブレーキをかけた際にハンドルや車体、ブレーキペダルに「ガタガタ」という不快な振動が発生する現象です。
主な原因は、ブレーキローターの歪みや変形です。度重なるブレーキングによる熱の影響でローターが歪んでしまうことで発生します。特に、高速走行や下り坂でのブレーキを多用すると、ローターに大きな負担がかかります。
この振動を放置すると、ブレーキ性能の低下につながるだけでなく、同乗者の車酔いの原因にもなります。修理方法としては、軽度な歪みであればブレーキローターを研磨して修正することも可能ですが(費用目安:1万円~2万円程度)、歪みが大きい場合はローターの交換が必要です。ブレーキパッドと同時にローターを交換する場合、費用は4万円~7万円程度が目安となります。
塗装のクリア剥げ(特にルーフ)
FJクルーザーの白いルーフはデザイン上の大きな特徴ですが、年数が経つと塗装の最も外側にあるクリア層が劣化し、剥がれてきてしまうことがあります。 これは、紫外線や酸性雨などの影響で塗装がダメージを受けることが原因です。
クリア層が剥がれると、塗装本来の艶がなくなり、見た目が古びて見えてしまいます。さらに放置すると、塗装の色あせや、下地へのダメージにもつながります。
定期的なワックスがけやコーティング施工: 塗装面を保護膜で覆い、紫外線などのダメージを軽減します。
屋根付きの駐車場に保管する: 紫外線や雨風に直接さらされるのを防ぎます。
もしクリア剥げが発生してしまった場合、部分的な補修は難しく、ルーフ全体の再塗装が必要になることがほとんどです。修理費用は、板金塗装工場の技術や使用する塗料によって大きく異なりますが、10万円以上かかることも珍しくありません。
デフロックアクチュエーターの固着
オフロードパッケージに標準装備されている「リアデフロック」は、悪路走破性を高めるための強力な武器ですが、長期間使用しないことでアクチュエーター(作動装置)が固着してしまうトラブルがあります。
デフロックは、左右のタイヤの回転差をなくし、どちらか一方のタイヤが空転しても、もう一方のタイヤに駆動力を伝達するシステムです。しかし、普段の街乗りでは使用する機会がほとんどないため、いざ使おうとしたときに動かなくなっているケースが少なくありません。
このトラブルを防ぐ最も効果的な方法は、定期的にデフロックを作動させることです。 安全な場所で、月に一度程度スイッチを入れて作動を確認するだけでも、固着の予防につながります。もし固着してしまった場合、アクチュエーターの交換が必要となり、修理費用は比較的高額になる可能性があります。
FJクルーザーの故障にかかる修理費用の目安

FJクルーザーの維持を考える上で、気になるのが故障した際の修理費用です。ここでは、前述した代表的な故障箇所の修理費用相場を一覧表にまとめました。ただし、これはあくまで目安であり、車両の状態や交換する部品(純正品、社外品など)、依頼する工場によって費用は変動します。
| 故障箇所 | 修理内容 | 費用目安 |
|---|---|---|
| ラジエーター | 本体交換 | 50,000円 ~ 100,000円 |
| ドライブシャフトブーツ | 片側1箇所交換 | 15,000円 ~ 30,000円 |
| ブレーキローター | 研磨 | 10,000円 ~ 20,000円 |
| 交換(パッド同時交換) | 40,000円 ~ 70,000円 | |
| 塗装(ルーフ) | 再塗装 | 100,000円 ~ |
| エアコン | コンプレッサー交換 | 100,000円 ~ |
| エンジンチェックランプ点灯 | センサー類交換など | 数万円 ~ 100,000円 |
修理費用を抑えるためのポイント
予期せぬ出費はできるだけ避けたいものです。修理費用を抑えるためには、いくつかのポイントがあります。
一つ目は、複数の修理工場から見積もりを取ることです。ディーラーは安心感がありますが、工賃が比較的高めに設定されていることが多いです。一方で、町の整備工場やFJクルーザーのカスタムを得意とする専門店など、複数の選択肢を比較検討することで、費用を抑えられる可能性があります。
二つ目は、リビルト品や社外品パーツの活用です。リビルト品とは、中古部品を分解・洗浄し、消耗部品を新品に交換して再生したパーツのことです。新品の純正品よりも安価でありながら、品質は保証されているため、賢い選択肢と言えるでしょう。また、性能やデザインにこだわらなければ、安価な社外品パーツを選ぶのも一つの方法です。
故障に備える自動車保険の活用
万が一の高額な修理に備えて、自動車保険の車両保険に加入しておくことも重要です。車両保険は、事故による損害だけでなく、台風や洪水などの自然災害による故障や、盗難、いたずらによる損害も補償の対象となる場合があります。
ただし、エンジンの内部的な故障など、経年劣化によるトラブルは補償の対象外となることがほとんどです。補償内容は保険会社や契約プランによって大きく異なるため、自分の車の年式や使用状況に合わせて、必要な補償内容をよく確認し、最適なプランを選ぶことが大切です。
故障を防ぐためのメンテナンスと日常点検
FJクルーザーの故障リスクを減らし、長く快調な状態を保つためには、日頃からのメンテナンスが欠かせません。 ここでは、オーナー自身でできる日常的な点検や、定期的に行いたいメンテナンスについて解説します。
基本中の基本!定期的なオイル交換
エンジンオイルは、エンジン内部の潤滑、冷却、洗浄など、非常に重要な役割を担っています。 定期的なオイル交換を怠ると、エンジン性能の低下や燃費の悪化を招くだけでなく、最悪の場合、エンジンが焼き付いてしまうなど、致命的な故障につながる可能性があります。
交換時期の目安は、走行距離や使用状況によって異なりますが、一般的には5,000km走行ごと、または半年に一度の交換が推奨されています。特に、オフロード走行や短距離走行が多い場合は、エンジンに負担がかかりやすいため、早めの交換を心がけましょう。オイル交換は、車のメンテナンスの基本であり、愛車の寿命を延ばす上で最も重要な作業の一つです。
頑丈な足回りを維持するチェックポイント
FJクルーザーの魅力である高い悪路走破性を支えているのが、頑丈な足回りです。しかし、オフロード走行などで酷使される部分でもあるため、定期的なチェックが重要です。
特に注意して確認したいのが、前述したドライブシャフトブーツや、サスペンションアームの関節部分にあるボールジョイントブーツなどのゴム部品です。 これらのブーツにひび割れや破れがないか、定期的に覗き込んで確認する習慣をつけましょう。
また、オフロード走行後には、足回りを高圧洗浄機などで洗浄し、泥や砂、融雪剤などをしっかりと洗い流すことが大切です。 これを怠ると、サビの発生や部品の劣化を早める原因となります。
サビからボディを守るための対策
ラダーフレーム構造を持つFJクルーザーは、ボディ下回りのサビにも注意が必要です。 特に、降雪地域で使用される車両は、道路に撒かれる融雪剤の影響でサビが発生しやすくなります。
サビは一度発生すると進行を止めるのが難しく、放置するとフレームの強度を低下させるなど、安全性にも関わる問題に発展する可能性があります。有効な対策としては、購入時や車検のタイミングで下回りの防錆塗装(アンダーコート)を施工することです。 これは、下回りを特殊な塗料でコーティングし、サビの発生を抑制するもので、特に降雪地域にお住まいの方には強くおすすめします。
また、洗車の際には、ボディ表面だけでなく、タイヤハウスの内側や下回りもしっかりと洗浄することを心がけましょう。
中古のFJクルーザーを購入する際の注意点

生産が終了しているFJクルーザーは、現在中古車でしか手に入れることができません。 状態の良い個体を見つけるために、購入時にはいくつか注意すべきポイントがあります。
最重要書類「整備記録簿」の確認
中古車選びで最も重要なのが、整備記録簿(メンテナンスノート)の確認です。 整備記録簿には、その車が過去にどのような点検や整備を受けてきたかが記録されています。
定期点検がきちんと実施されているか: 12ヶ月点検や24ヶ月点検が定期的に行われているかを確認します。
オイル交換の頻度: 適切なタイミングでオイル交換がされてきたかを確認します。
*消耗品の交換履歴: ブレーキパッドやタイヤ、バッテリーなどの消耗品がいつ交換されたかを確認することで、購入後の出費を予測できます。
整備記録簿がしっかりと残っている車両は、前のオーナーが大切に扱ってきた証拠とも言え、信頼性が高いと判断できます。
下回りのサビとオフロード走行の痕跡
次に、車両をリフトアップしてもらい、下回りの状態を自分の目で確認することが重要です。 チェックすべきポイントは、フレームや足回り部品のサビです。特に、メンバーの接合部や溶接部はサビやすい箇所なので、念入りに確認しましょう。過度なサビがある車両は、フレームの強度が低下している可能性があり、避けた方が賢明です。
また、本格的なオフロード走行で使われてきた車両は、下回りに岩や障害物と接触した際の傷やへこみが残っていることがあります。 多少の傷は仕方ない部分もありますが、大きなダメージがある場合は、足回りのアライメントが狂っていたり、見えない部分に損傷を抱えていたりする可能性も考えられます。
試乗で五感をフル活用!異音や振動を体感
可能な限り、購入前には試乗させてもらいましょう。 試乗では、ただ運転するだけでなく、五感をフル活用して車の状態をチェックします。
エンジンをかけた際の異音や、アイドリング中の不自然な振動がないか。走行中にハンドルがとられたり、ブレーキをかけた際に異音や振動(ジャダー)が発生したりしないか。また、段差を乗り越えた際に足回りから「コトコト」といった異音がしないかなど、少しでも違和感を覚えたら、販売店の担当者に質問しましょう。
特に、4WDシステムが正常に作動するかどうかの確認も重要です。安全な場所で2WDと4WDの切り替えを試したり、オフロードパッケージであればデフロックのスイッチを入れて作動音を確認したりすることも忘れずに行いましょう。
まとめ:FJクルーザーの故障と長く付き合うために

この記事では、FJクルーザーによくある故障事例や修理費用、そして故障を防ぐためのメンテナンス方法について解説しました。
FJクルーザーは、一部に「持病」と呼ばれる弱点があるものの、基本的には非常に頑丈で信頼性の高い車です。 生産終了から時間が経ち、中古車市場では経年劣化が進んだ個体も増えてきていますが、それはどの車にも言えることです。
重要なのは、FJクルーザーの弱点を正しく理解し、定期的なメンテナンスをしっかりと行うことです。 オイル交換などの基本的なメンテナンスを怠らず、サビ対策や足回りのチェックを定期的に行うことで、大きなトラブルを未然に防ぎ、長く安心して乗り続けることができます。 中古車を選ぶ際には、整備記録簿や下回りの状態をしっかりと確認し、信頼できる販売店から購入することが、後悔しないための第一歩となるでしょう。



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