トヨタの高級セダンの頂点に立つクラウンマジェスタ。その中でも2013年から2018年にかけて販売された210系は、3.5LのV6ハイブリッドエンジンを搭載し、圧倒的な静粛性とパワフルな走りを両立させたモデルとして人気を博しました。
しかし、その華やかな魅力の裏には、購入前に知っておくべきいくつかの「欠点」も存在します。特に中古車での購入を検討している場合、ハイブリッドシステム特有のトラブルや、乗り心地の要であるエアサスペンションの故障リスク、そして年式相応の装備の古さなど、見過ごせないポイントがいくつかあります。
この記事では、210マジェスタが抱える具体的な欠点を深掘りし、維持費や中古車選びの注意点まで、やさしくわかりやすく解説していきます。憧れの一台を手に入れてから後悔しないために、ぜひ最後までご覧ください。
210マジェスタの欠点とは?購入前に押さえるべき弱点

210マジェスタは、トヨタが誇る高級セダンとして、その上質な乗り心地や静粛性、そして風格あるデザインで多くのドライバーを魅了してきました。 しかし、その一方で、年数が経過した中古車を購入する際には、いくつかの弱点を理解しておくことが非常に重要です。特に、このモデルの根幹をなすハイブリッドシステムや、特徴的な装備であるエアサスペンションには、経年劣化による故障のリスクが伴います。
ハイブリッドシステム関連のトラブル
210マジェスタの心臓部である3.5L V6ハイブリッドシステムは、力強い加速と静粛性を高いレベルで両立させていますが、その複雑さゆえの欠点も抱えています。 最も注意したいのが、ハイブリッドバッテリーやインバーターといった主要部品の故障です。 これらの部品が故障すると、警告灯が点灯し、場合によっては走行不能になることもあります。
修理費用は非常に高額になる傾向があり、例えば駆動用バッテリーとインバーターが同時に故障した場合、80万円近い修理費がかかったという事例も報告されています。 中古車で購入する場合、前のオーナーのメンテナンス履歴が不明なケースも多く、購入直後に高額な修理費用が発生するリスクは常に念頭に置く必要があります。また、ハイブリッドシステムは専門的な知識と設備が必要なため、修理できる工場が限られる点もデメリットと言えるでしょう。 購入前には、ハイブリッドシステムの保証が付けられるか、または信頼できる専門店で徹底的に点検してもらうことが賢明です。
足回り(特にエアサス)の故障リスク
210マジェスタの滑らかで快適な乗り心地を実現しているのが、エアサスペンション(エアサス)です。これは、従来の金属製スプリングの代わりに、空気の圧力を利用して車高を調整し、路面からの衝撃を吸収する仕組みです。しかし、このエアサスは210マジェスタの代表的な弱点としても知られています。
経年劣化により、エアを蓄えるゴム製の部品(エアバッグ)に亀裂が入ったり、空気を送り込むコンプレッサーが故障したりすることがあります。 故障すると、「車高が片側だけ下がる」「車全体が傾く」「乗り心地が極端に悪化する」といった症状が現れます。 修理には高額な費用がかかり、エアスプリング1本あたり約8万円、4本すべて交換すると30万円以上の出費になることも珍しくありません。 さらに、部品は2本一組でしか発注できない場合もあり、片方の故障でも最低2本分の費用が必要になるケースもあります。 中古車を検討する際は、駐車中に車体が傾いていないか、エンジン始動時にスムーズに車高が上がるかなどを必ず確認しましょう。
内装・装備の古さや不満点
210マジェスタは発売当時、最高級セダンにふさわしい豪華な内装と先進的な装備を誇っていました。しかし、最終モデルから数年が経過した現在では、いくつかの点で古さを感じてしまうのは否めません。特に、純正ナビゲーションシステムは、現代のスマートフォン連携機能(Apple CarPlayやAndroid Autoなど)には対応しておらず、地図データの更新も終了している可能性があるため、使い勝手の面で不満を感じるかもしれません。
また、安全装備についても、後期モデルでは「Toyota Safety Sense P」に近い機能が搭載されていますが、最新のモデルと比較すると機能は限定的です。 インテリアの質感は全体的に高いものの、一部のプラスチックパーツにチープさを感じるという声や、経年劣化によるビビリ音が発生するという口コミも見られます。 さらに、ハイブリッドバッテリーを後部座席後方に搭載している影響で、
ゴルフバッグなどの大きな荷物を積む際には、不便を感じるかもしれません。
燃費性能は期待できる?
210マジェスタのカタログ燃費(JC08モード)は18.2km/Lと、3.5Lの大型セダンとしては非常に優れた数値です。 しかし、これはあくまで理想的な条件下での数値であり、実際の燃費(実燃費)は乗り方や走行環境によって大きく異なります。
複数のオーナーレビューや燃費記録サイトを見ると、実燃費は平均して12~15km/L程度に落ち着くことが多いようです。 特に、ストップ&ゴーの多い市街地走行が中心だと11km/L台まで落ち込むこともあり、逆に高速道路を一定速度で巡航すれば15km/Lを超える良好な燃費を記録することもあります。 「ハイブリッドだから燃費が良い」と過度に期待すると、実際のガソリン代が想定以上にかさんでしまう可能性があります。とはいえ、V型6気筒3.5リッターという大排気量エンジンを搭載した全長約5メートルの高級セダンであることを考えれば、この実燃費は十分に経済的だと言えるでしょう。
維持費はどれくらい?210マジェスタのランニングコスト

憧れの210マジェスタを手に入れた後、現実的に向き合わなければならないのが維持費です。高級車であるため、税金やメンテナンス費用は一般的な乗用車よりも高額になる傾向があります。購入前に年間のランニングコストを把握しておくことで、無理のないカーライフを送ることができます。
税金(自動車税・重量税)
210マジェスタを所有する上で、毎年必ずかかるのが自動車税です。この税額はエンジンの排気量によって決まります。210マジェスタは3.5L(3,456cc)エンジンを搭載しているため、自動車税は年間58,000円(2019年9月30日以前に新規登録された場合)となります。 これは、一般的なコンパクトカー(1.0L~1.5Lで30,500円~34,500円)と比較すると、2万円以上高くなります。
また、2年に1度の車検時に支払う自動車重量税も考慮しなければなりません。210マジェスタの車両重量は1,800kg台が中心なので、車検時には32,800円(エコカー減税適用なしの場合)の重量税が必要になります。年間に換算すると16,400円の負担です。このように、税金だけでも年間7万円以上のコストがかかることを覚えておきましょう。
車検費用とメンテナンス代
2年に1度訪れる車検は、まとまった出費が必要になるタイミングです。車検費用は、前述の自動車重量税や自賠責保険料といった「法定費用」に加えて、「車検基本料」や「整備費用」で構成されます。210マジェジェスタの場合、法定費用と基本料を合わせると、何も交換部品がなくても10万円前後が一つの目安となるでしょう。
しかし、実際には年数や走行距離に応じて様々な部品の交換が必要になります。特に210マジェスタは、エンジンオイルやタイヤといった一般的な消耗品も、大型セダンに適したグレードの高いものが推奨されるため、比較的高価です。 さらに、ハイブリッドシステムやエアサスといった特殊な機構の点検も必要になるため、ディーラーや専門工場に依頼すると、点検費用が上乗せされる可能性もあります。定期的なメンテナンスを怠ると、後々大きな故障につながり、結果的に高額な修理費用が発生するリスクもあるため、日頃からの点検と計画的な費用準備が大切です。
ハイブリッドバッテリー交換の費用
210マジェスタの維持費を考える上で、避けて通れないのが駆動用ハイブリッドバッテリーの寿命と交換費用です。 トヨタは駆動用バッテリーに対して「新車から5年間、または走行距離10万kmまで」の特別保証を設けていますが、中古車の場合はこの保証が切れていることがほとんどです。
バッテリーの寿命は乗り方や環境によって大きく変わりますが、一般的には15万~20万kmが一つの目安とされています。交換が必要になった場合、ディーラーで新品に交換すると工賃込みで30万円以上の費用がかかる可能性があります。 これは非常に大きな負担ですが、費用を抑える方法として「リビルト品」の活用があります。リビルト品とは、中古のバッテリーを分解・洗浄し、劣化した部分を新品部品に交換して再生したもので、新品よりも安価に交換することが可能です。それでも15万円~20万円程度の費用は見込んでおく必要があるでしょう。ハイブリッドシステムの警告灯が点灯した場合、高額な出費を覚悟しなければならない可能性があることは、210マジェスタを所有する上での大きな注意点です。
燃料代(燃費)の目安
日々のランニングコストとして最も身近なのが燃料代です。210マジェスタの使用燃料はハイオクガソリンです。 前述の通り、実燃費は平均して12~15km/L程度です。
仮に実燃費を12.0km/L、ハイオクガソリンの価格を1Lあたり185円、年間の走行距離を10,000kmと仮定して計算してみましょう。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 年間走行距離 | 10,000 km |
| 実燃費 | 12.0 km/L |
| 年間消費ガソリン量 | 約 833 L (10,000 ÷ 12.0) |
| ハイオク単価 | 185 円/L |
| 年間ガソリン代 | 約 154,105 円 (833 × 185) |
この計算だと、年間のガソリン代は約15.4万円となります。月々に換算すると約12,800円です。もちろん、走行距離やガソリン価格の変動によってこの金額は変わりますが、維持費をシミュレーションする上での一つの目安として参考にしてください。
210マジェスタの中古車選びで後悔しないためのチェックポイント
210マジェスタの欠点や維持費を理解した上で、いよいよ中古車選びです。魅力的な個体を賢く選ぶためには、いくつか重要なチェックポイントがあります。特に、高級車であり複雑な機構を持つ210マジェスタは、車両の状態を見極めることが非常に重要になります。
修復歴の有無と車体の状態
中古車選びの基本中の基本ですが、210マジェスタにおいても「修復歴」の有無は必ず確認してください。修復歴ありの車両は、車の骨格(フレーム)部分を修理・交換した経歴があることを意味し、走行安定性に問題を抱えていたり、後々予期せぬトラブルが発生したりするリスクが高まります。価格が相場より著しく安い場合は特に注意が必要です。
また、修復歴がなくとも、車体全体のコンディションチェックは欠かせません。ボディの塗装面に色あせやクリア剥げがないか、パネル同士の隙間(チリ)が均一か、ドアやトランクの開閉はスムーズかなどを確認しましょう。特に、
下回りを覗き込み、マフラーや足回り部品に過度なサビが発生していないかも確認できるとより安心です。
ハイブリッドシステムの点検記録
210マジェスタの心臓部であるハイブリッドシステムのコンディションは、最も慎重に確認したい項目です。 まずは、エンジンを始動させ、メーター内に「ハイブリッドシステムチェック」などの警告灯が点灯していないかを確認します。
最も重要なのは、過去のメンテナンス履歴です。特にディーラーで定期的に点検を受けてきた車両は、ハイブリッドシステムに関する点検記録もしっかり残っている可能性が高く、安心材料になります。 販売店に依頼して、過去の点検整備記録簿を見せてもらいましょう。駆動用バッテリーやインバーターといった高額部品の交換履歴があれば、当面の出費リスクを抑えられます。逆に、メンテナンス履歴が不明瞭な車両や、格安販売店で現状販売されているような車両は、購入後に大きなトラブルを抱える可能性があるため、慎重な判断が求められます。
エアサスの動作確認と異音
210マジェスタの乗り心地を支えるエアサスの状態確認も必須です。 中古車販売店で現車を確認する際には、以下の点をチェックしてみてください。
- 駐車時の車高:車両を平坦な場所に停めた状態で、四輪のタイヤとフェンダーの隙間が均等かを確認します。特定の箇所だけ極端に沈み込んでいる場合は、エア漏れの可能性があります。
- エンジン始動時の動き:エンジンをかけると、コンプレッサーが作動して車高を正常な位置に調整します。このとき、スムーズに車高が上がり、不自然な異音(コンプレッサーの過大な作動音など)がしないかを確認します。
- 試乗での確認:可能であれば試乗を行い、段差を乗り越えた際に「ゴトゴト」といった異音や、フワフワと揺れが収まらないような挙動がないかを確認しましょう。
エアサスの不具合は高額な修理につながるため、少しでも違和感があれば販売店の担当者に質問し、納得のいく説明が得られない場合は購入を見送る勇気も必要です。
定期的なメンテナンス履歴の確認
ハイブリッドシステムやエアサスだけでなく、車両全体のコンディションを良好に保つためには、定期的なメンテナンスが不可欠です。その証となるのが「点検整備記録簿」です。この記録簿には、過去に行われた車検や定期点検の内容、エンジンオイルやブレーキフルードといった消耗品の交換時期、走行距離などが詳細に記載されています。
記録簿がしっかりと残っており、定期的にメンテナンスが実施されてきたことが確認できる車両は、大切に扱われてきた可能性が高いと言えます。 特に、トヨタディーラーでの整備記録が豊富に残っている車両は、信頼性が高いと判断できるでしょう。走行距離が少なくても、長期間オイル交換などがされていない車両は、エンジンの内部にダメージを抱えている可能性もあります。走行距離の数字だけでなく、これまでどのようなメンテナンスを受けてきたかという「車両の経歴」を重視することが、良質な210マジェスタを見つけるための重要なポイントです。
210マジェスタの魅力と欠点を比較!どんな人におすすめ?

ここまで210マジェスタの欠点や注意点について詳しく見てきましたが、もちろんそれを補って余りある素晴らしい魅力を持つ車です。ここでは、欠点と魅力を天秤にかけ、どのような方に210マジェスタがおすすめできるのかを考えていきましょう。
高級感あふれる内外装デザイン
210マジェスタの最大の魅力の一つは、その風格あるエクステリアデザインです。ベースとなった210系クラウンロイヤルからホイールベースを75mm延長し、全長は4,970mmに達します。 この伸びやかなサイドビューは、後席の快適性を重視するマジェスタならではのプロポーションであり、他のクラウンとは一線を画す存在感を放っています。縦基調のメッキが印象的なフロントグリルや、マジェスタ伝統のテールランプデザインも、最上級モデルとしての品格を物語っています。
インテリアも同様に、贅を尽くした空間が広がっています。本革シートや随所にあしらわれた木目調パネルは、上質な移動空間を演出。 特に後席の快適性は特筆もので、広い足元スペースはもちろん、Fバージョンなどの上級グレードでは、リクライニング機能や各種スイッチ類を備えた大型リアアームレストが装備され、まさにVIPカーと呼ぶにふさわしいおもてなしの空間が提供されます。
静粛性と快適な乗り心地
210マジェスタに乗って誰もが驚くのが、その圧倒的な静粛性です。 3.5LのV6エンジンは元々静かですが、ハイブリッドシステムとの組み合わせにより、発進時や低速走行時はモーターのみで走行するため、車内はほぼ無音に近い静けさに包まれます。エンジン始動後も、その存在を意識させないほどスムーズに回転し、ロードノイズや風切り音も徹底的に抑えられています。
そして、この静粛性と相まって極上の移動体験をもたらすのが、エアサスペンションによる快適な乗り心地です。 路面の細かな凹凸をしなやかに吸収し、まるで絨毯の上を滑るようなフラットな乗り心地を実現しています。故障のリスクという欠点はありますが、正常に機能しているエアサスがもたらす快適性は、他のサスペンション形式では味わえないマジェスタならではの大きな魅力と言えるでしょう。
V6 3.5Lハイブリッドのパワフルな走り
210マジェスタが搭載する「2GR-FXE」型3.5L V6エンジンとモーターを組み合わせたFRハイブリッドシステムは、システム最高出力343PSを発生します。 これは、静粛性や快適性だけでなく、ドライバーズカーとしてのスポーティな走りも楽しめることを意味します。
アクセルを踏み込むと、モーターのアシストによってタイムラグなくスムーズに加速し、大排気量エンジンならではの力強いトルクで巨体を軽々と前へ進めます。 高速道路での合流や追い越しも余裕綽々で、静かな車内で気づけば速度が出ている、という場面も少なくありません。走行モードを選択すれば、燃費重視のエコモードから、よりダイレクトな走りを楽しめるスポーツモードまで、シーンに合わせた走り方が可能です。 上質な乗り心地のショーファードリブンカー(後席に乗る車)としての側面と、ドライバー自身が走りを楽しめるパワフルなセダンとしての側面を併せ持っているのが、210マジェスタの奥深い魅力です。
欠点を理解した上で選ぶべきか?
ここまで見てきたように、210マジェスタは数々の魅力を持つ一方で、ハイブリッドシステムやエアサスの故障リスク、そしてそれに伴う高額な維持費という明確な欠点も存在します。
これらの点を踏まえると、210マジェスタは以下のような方におすすめできる車と言えるでしょう。
- セダンが好きで、特に後席の快適性や静粛性を重視する方
- ある程度の維持費や、万が一の際の高額な修理費用を許容できる経済的余裕のある方
- 信頼できる整備工場や専門店を見つけ、定期的なメンテナンスをきちんと行える方
- 中古車の状態を自身で見極める、あるいは信頼できる専門家のアドバイスを受けられる方
逆に、「とにかく安く高級セダンに乗りたい」「維持費はできるだけ抑えたい」「故障のリスクは絶対に避けたい」という方には、残念ながらあまり向いていないかもしれません。欠点を正しく理解し、それを受け入れる覚悟があってこそ、210マジェスタが持つ本来の魅力を存分に味わうことができるのです。
まとめ:210マジェスタの欠点を理解して賢いカーライフを

トヨタ 210マジェスタは、圧倒的な静粛性、パワフルな3.5Lハイブリッドエンジン、そしてエアサスがもたらす極上の乗り心地など、多くの魅力を持つ最後のクラウンマジェスタです。 その一方で、購入を検討する際には、いくつかの重要な欠点を理解しておく必要があります。
特に注意すべきは、ハイブリッドシステムとエアサスペンションという、この車の根幹をなす機構の故障リスクです。 これらの修理には数十万円単位の高額な費用がかかる可能性があり、維持費全体を押し上げる大きな要因となります。 また、年式の経過によるナビゲーションシステムの古さや、ハイブリッドバッテリー搭載によるトランクの狭さといった点も、実用面でのデメリットとして挙げられます。
中古車として購入する際は、価格の安さだけで選ぶのではなく、修復歴の有無はもちろんのこと、「点検整備記録簿」でハイブリッドシステムやエアサスを含むメンテナンス履歴をしっかりと確認することが、後悔しないための最も重要なポイントです。
これらの欠点を理解し、適切な維持管理と万が一の出費への備えができるのであれば、210マジェスタは価格以上の満足感を与えてくれる素晴らしいパートナーとなるでしょう。



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